試合レポート

中京大中京vs鹿児島実

2015.08.12

上位打線だけではなく、下位打線にも勝負強い打者を揃える中京大中京

 強いチームは上位打線だけではなく、下位打線の選手も目立つぐらいの力量がある選手もそろっている。
 中京大中京と鹿児島実業と名門校同士の一戦は中京大中京の下位打線を打つ選手の活躍が光った一戦だった。
 2回裏、中京大中京は一死一、三塁から内藤諒一(2年)が左前へ落ちる適時打で1点を先制し、だが3回表、鹿児島実業は有村健太(3年)の適時打で1対1の同点に追いつく。

 その後は両投手が好投。
中京大中京の先発・上野翔太郎は、コントロール重視の投球。140キロ前後(最速143キロ)の速球、さらに130キロ前後のスライダー、カーブ、チェンジアップと両サイドに投げ分ける完成度の高い投球。ここぞという場面でしっかりと力で押す投球を見せ、開幕戦で18得点を挙げた鹿児島実業もなかなか捉えることができなかった。

 鹿児島実業の橋本拓実も好投。この日はセットポジションからの投球となった。
右オーバーから投げ込む直球は常時130キロ~140キロ。最初は130キロ中盤であまり調子が良くないと思っていた。しかし尻上がりに135キロ以上の速球を計測することも多くなり、力で押す投球もできるようになっている。

 またスライダー、フォークの中に、100キロ前後のカーブを投げるなど、緩急を織り交ぜた投球で中京大中京打線を封じることができていた。

 試合が動いたのは6回裏、中京大中京は一死から4番伊藤寛士(3年)が左前安打で出塁。伊藤が盗塁を仕掛け、見事に成功。一死二塁のチャンス。伊藤は足自体は速くないが、一瞬の隙をついた見事な盗塁であった。そして矢田崎 明土(3年)の適時打で勝ち越しに成功すると、さらに一死満塁から内藤がストレートを捉えて、右越え適時打二塁打で4対1と勝ち越しに成功する。


関連記事
・第97回全国高等学校野球選手権大会特設ページ
・夏よりも熱い!全国の野球部に迫った人気企画 「僕らの熱い夏2015」

第97回全国高等学校野球選手権大会

 この内藤の一打は大きかった。7回表、鹿児島実業は長谷部 大器(3年)の犠飛と安藤 優幸(3年)の適時打で4対3と1点差に迫られるものの、7回裏、4番を打つ伊藤が一死三塁のチャンスから左前適時打を放ち、5対3と点差を広げる。通算40本塁打以上を打つ伊藤。伊藤は外角打ちが非常に上手い。弧を描くようなスイング軌道で、打球を運ぶ感覚で飛ばすが、ここ一番ではレベルスイングができる。状況に応じてコンパクトなスイングができる。6回裏に盗塁を決めたように、機転が利いたプレーができる選手である。さらに8回裏にも一死二塁から内藤が左中間を破る適時二塁打、さらにエース上野の適時打が飛び出し、7対3に。

 この日4打点の内藤。とても8番打者とは思えないぐらいの打撃の完成度を誇る好選手。スクエアスタンスで構える姿は力みがなく、投手をしっかりと見据えたバランスの良い構えができており、インパクトまで無駄がなく、さらに下半身のステップを見るとしっかりと踏ん張りが効いており、フォームの安定度もなかなか。まさに好選手であった。こんな打撃センスが高い選手を下位に控える。改めて層の厚さを実感させる。

 そして投げてはエースで主将の上野翔太郎(3年)が尻上りに調子を上げていき、140キロ台の速球、キレのある変化球で鹿児島実業打線を抑え、3失点完投勝利でベスト16入りを決めた。上野の投球は完成度の高さだけではなく、気持ちの強さに加え、一試合を通して、どこで力を入れればいいか、計画性を持って投げることができている。ドラフト候補云々の投手ではないが、投球の引き出しの多さを見ると、さすが、全国レベルの強豪が揃う愛知大会を勝ち抜いた投手だと実感させる。

 次は関東一と対戦するが、お互い打撃力が高く、かなり激しい試合が予想される。3回戦屈指の好カードとなるだろう。

(文=河嶋 宗一


関連記事
・第97回全国高等学校野球選手権大会特設ページ
・夏よりも熱い!全国の野球部に迫った人気企画 「僕らの熱い夏2015」

第97回全国高等学校野球選手権大会

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.08.23

決勝戦のスタメンが発表!京都国際はエースの中崎、関東一は東海大相模戦で好投した技巧派左腕が先発!

2024.08.22

ワンチャンスに泣いた神村学園と青森山田の「背番号1」、重圧の中で戦い抜いた見事な投球【夏の甲子園ピカイチ選手・準決勝】

2024.08.22

兵庫工、彩星工科などが勝利!兵庫秋季高校野球地区大会

2024.08.22

京都国際を初の決勝進出に導いた2年生左腕、防御率0.00要因を分析する!<高校野球ドットコム注目選手ファイル・ コム注>

2024.08.22

9月にアジア大会開催「U-18日本代表」に選ばれるのはこの18人だ!甲子園で輝いた選手たちが多数選出か!?

2024.08.19

大社のエース左腕・馬庭はベンチスタート!神村学園はエース・今村が先発!ベスト4かけた両校のスタメンを発表!【24年・夏甲子園】

2024.08.18

岡山学芸館、倉敷商、創志学園などがシード!岡山高校野球秋季地区予選組み合わせ

2024.08.18

「防御率0.00のまま甲子園を去る」岡山学芸館・丹羽知則の快投14回1/3【夏の甲子園ピカイチ選手・11日目】

2024.08.19

天理と智辯学園は同パートで勝ち上がれば準決勝で対戦!奈良秋季大会組み合わせ決定

2024.08.17

甲子園も大騒然!早稲田実業の「内野5人シフト」が成功!左ゴロを処理したスーパー1年生に大社の指揮官も驚愕

2024.07.27

大阪桐蔭vs履正社のライバル対決!大阪桐蔭、2年生右腕に先発マウンド託す!【スタメン】

2024.07.25

まさかの7回コールドで敗戦...滋賀大会6連覇を目指した近江が準決勝で涙【2024夏の甲子園】

2024.07.24

享栄、愛工大名電を破った名古屋たちばなの快進撃は準々決勝で終わる...名門・中京大中京に屈する

2024.07.31

甲子園を逃した“超高校級”逸材リスト 超進学校に現れた二刀流、サイクルヒットの名門校捕手、佐々木朗希二世らが聖地を踏めず

2024.07.31

2024年夏の甲子園「地方大会勝ち上がり表付き」全49代表一覧