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2年連続千葉大会ベスト4狙う新興勢力 千葉商大付に見た、大会で勝ち上がれる勢いの作り方

2024.07.09


千葉商大付の練習模様

2023年夏、千葉大会は専大松戸が甲子園出場を決めたが、1つのチームが大躍進を遂げた。

千葉県市川市に学校を構える千葉商大付。2023年の夏の大会ではノーシードで大会を迎えたが、2回戦でシード校・千葉日大一にコールド勝ちで勢いづくと、3回戦では市立柏に延長12回の大熱戦の末、11対10で勝利した。

この勝利で大会の流れを完全につかむと、遂に準々決勝で強豪・木更津総合相手に8対4で勝利してベスト4入り。準決勝・習志野にはコールドで敗れたが、一躍大会の主役級に躍り出る活躍だった。

ポイントゲームが来ればチャンスがある

その大躍進から1年。2024年はCシードとして夏の千葉大会を迎える千葉商大付。春の県大会ではベスト16で終わったが、秋の県大会でもベスト4入り。先輩たちが作った勢いそのままに、大会を勝ち上がっている。
まさにいま、流れに乗っている。乗りに乗っているチームをまとめる主将・藤﨑怜央は、「特に3年生が緊張感をもってやっているので、雰囲気が変わってきた」と大会に向けて上昇傾向にあると明かすと、1年前に先輩たちが見せてくれた活躍を、自分たちと照らし合わせながら振り返る。

「先輩たちがベスト4まで勝ち上がったことで、自信になりました。今まで甲子園が夢だったのが、現実的な目標になったので、いまは本気で目指せると思っています。
とはいえ、経験者は1人だけです。なので、今年もベスト4と期待してもらっていますが、今の自分たちはチャレンジャー精神です」(藤﨑主将)

藤﨑怜央主将

ただ、チャレンジャー精神でベスト4に入れるほど簡単ではない。ノーシードから勝ち上がるには6連勝を要する。チームの投打の要・平林大吉は「先輩たちの作ったベスト4はすごいと思います」と改めて先輩たちの躍進に敬意を表している。

そんななか指揮官・吉原巧監督は「ポイントゲームが大会中に来たら、チャンスはある」と期待を寄せている。

選手、指揮官が語る、千葉商大付におけるポイントゲームの重要性

吉原監督の話す、ポイントゲームとは何か。吉原監督いわく、「そのゲームを境に、チームの状態を上げていく。選手たちがその試合を通じて自信を持って、大会に挑んでいく」試合のことだという。言うなれば、選手たちの自信の根拠となる、モチベーションが上がっていく試合が、吉原監督のいうポイントゲームである。

だから、試合内容が伴わなければポイントゲームにはなりえない。練習試合の相手から「ポイントゲームになるかもしれない」と吉原監督のなかで算段があっても、内容が悪ければ、ポイントゲームにはならないという。

秋の県大会では敗者復活戦直前に、ポイントゲームが見つかったという。

「新チームになって大幅にメンバーが入れ替わったこともあって、練習試合を戦っても負けてばかりだったんです。そのときは自信よりも、不安が大きかったんですけど、ポイントゲームで勝ち切れたことで、もう一度自信を付けられました。すごく重要な試合だったと思います」

相手はその夏、甲子園に出場して上位進出をしていた強豪校。相手はフルメンバーではなかったそうだが、甲子園で躍動した相手に勝ち切れたことで、選手たちは自信を取り戻した。

その後、敗者復活戦を勝ち抜いて県大会。そして県大会でも勝ち上がっていき、ベスト4まで進出。再び躍進してみせ、千葉商大付の実力を見せつけた。

今回の春の県大会では、大会前に強豪校との練習試合を実施。ポイントゲームに出会える可能性がいくつもあったが、自信を掴めるような試合展開にならず、ポイントゲームがないまま、春季大会をベスト16で終わった。

千葉商大付の練習模様

甲子園出場へ、「もう爆発するしかない」

そんな中で夏の大会を前に、千葉商大付はポイントゲームを見つけた。

相手は関東大会にも出場した強豪校で、出場メンバーも主力組が登場。その中で「監督から『公式戦を意識してやるぞ』って一言もらって、しっかりと雰囲気を作れた」と主力・平林が語るように、夏の大会を意識して挑むと、先発のマウンドに上がった主将・藤﨑が魅せる。

5回までヒット1本も許さない投球で、主将として、そしてエース格として十分すぎる仕事を果たした。これまでは2年生・鷲頭遥斗の活躍で登板機会が少なかった中で、強豪校相手に結果を出したことが、大きな自信を与えた。

「秋、春と試合に出場する機会がほとんどなかったので、正直、プレーで引っ張る自信がなくて、苦手でした。自分のなかでは『やらなきゃ』と思っていても、試合で活躍出来ないから一歩引いていたんですが、ポイントゲームで先発して結果を残した。それで自信を持つことができて、最近になってようやく練習から行動で引っ張れるようになりました」

今和泉瑛心

その藤﨑を引っ張る女房役・今和泉瑛心が、ホームランを放つ活躍で千葉商大付が主導権を握ることになった。このホームラン、ここまで正捕手争いに負けていた今和泉にとって、大きな自信を付ける一打となった。

「正直、春先に結果が出なくて焦っていたところ、ポイントゲームのところで、攻守で活躍できました。相手は強豪校で最初迫力に押されましたけど、主導権を握れたことで、あまり考え込まず、『引いても無駄だ。出来ることをやるしかない』と開き直れたんです。その結果、逆方向へのホームランが出るなど、自分もチームもベストに近いゲームでした」

そして最後、クローザーでマウンドに上がった平林が、相手の反撃を封じて見事勝利。平林、そしてチームにとって夏の大会に向けて内容と相手ともに文句なしのポイントゲームとなった。

平林大吉

「春の大会、『俺が打ってやる』とか自己中心的になってしまった自分がいました。けどポイントゲームを前に、ミーティングをしたことで、チームがまとまれましたし、個人的にも普段以上に集中できたので、調子も良くて結果が出ました。
だから試合中、投げていて楽しかったし、試合が終わってからも気持ちの高ぶりは止まらなかったです。今も授業中に『今日の練習は何をやろう』って考えてしまいます。大会が待ち遠しいです」(平林)

もちろん、選手個人だけではなく、「チーム全体的に練習に対する取り組み方が、自然と積極的で、前向きになってきました」と藤﨑主将が話すように、チーム全体にも大きな自信を与えた。

先輩たちが躍動したあの夏から1年。再び挑戦することになるが、藤﨑主将は、「チーム力を上げていかないといけないと思っていますが、夏の大会ではもう爆発するしかないと思っていますので、悔いなく相手にぶつかっていきたい」と意気込みを語る。

吉原監督の話すポイントゲームで、大会前の勢いは出来た千葉商大付。あとは吉原監督が、「大会中に、ポイントゲームの第2弾、第3弾が来るまで我慢する」と話すように、そのときまでこらえることができれば、大会中に勢いは加速するだろう。

果たしてどんな野球を見せてくれるか。新たな歴史に挑む千葉商大付から、今年も目が離せない。

この記事の執筆者: 田中 裕毅

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