試合レポート

キャプテンも、シートノック担当女子マネ兼助監督も野球未経験……それでも強豪に善戦した都立校が教えてくれた高校野球のすばらしさ【24年夏・東東京大会】

2024.07.09


助監督という立場で、内野ノックをこなした深川2年生、山田さん

第106回全国高校野球選手権東東京大会◇1回戦◇上野学園 7 − 1 深川◇2024年7月7日◇JPアセットスタジアム江戸川球場

◆【トーナメント表】夏の東東京大会 7日までの結果

昨秋と今春、連合チームでの出場を余儀なくされていた都立深川だが、この夏は新入生の加入もあり、単独チームとしての参加をすることができた。

その深川を迎える形の上野学園は、元々は音楽系の芸術科のある学校として知られていたが、近年は野球部活動にも積極的だ。昨秋は64校が出場する都大会にも進出をはたしている。今春も、初戦では豊島学院、2回戦でも八王子北を下して3回戦進出。5年前の第101回大会では東東京大会ベスト4にまで残り注目された。

とはいえ、上野学園は都会のど真ん中にある学校で、専用球場は茨城県牛久市にあるのだ。そこまで部員は毎日学校からバスで通い、練習を終えて帰ってくると夜の9時を過ぎるという。そんな中でも、「上野学園で野球をしたい」という思いで集まってきた生徒たちが、小川貴智監督の下で日々努力している。

「決して突出した選手がいるというチームでもありません。集まってくれた子たちで、チームを作り、毎年その形で戦っていこうという姿勢です。そんな中で、何とか結果を残していければいいかなと思っています。正直、昨年の共栄学園の優勝は刺激にもなりました。(共栄学園の)原田監督とは同年代でもありますし、交流もあるので、こっちも負けてはいられない、という思いはあります」(小川監督)

そんな上野学園は中盤までは苦しみながらも、何とか初戦突破して小川監督も安堵の表情。
「畳みかけていかれるチャンスは何度かあったんですが、やはり初戦の硬さもあったのかなぁ。安打も同本数くらい打たれましたが、シングルを3本打たれても得点はさせないぞという練習は徹底してやってきました。だから、その成果は出たのかなとは思います」と、守り勝った試合だと強調した。

一方、昨夏は、合同チームでの出場を余儀なくされた都立深川だが、今大会では単独チームとしての出場が叶った。それだけではなく、「下手したらコールド負けもあり得る」という相手に対して、しっかり食らいついて、上野学園と同じ10本の安打放った。
「非力でも、食い下がって行けば何とかなる」ことを証明した戦いぶりだった。しかもこの日3安打した山﨑 海光主将(3年)などは、高校に入ってから本格的に野球を始めたという選手だ。それでも、ここまでやれるのだということは、日々、真面目にきちんと練習していけば、何とかなるのだということを証明したと言ってもいいであろう。

また、都立深川のシートノックで最初に内野ノックを担当したのは2年生で助監督登録となっている山田 美来さんだった。ノックバットを少し短めに持って、丁寧にゴロを転がしていた。
実は、中学時代にクラブチームなどで野球経験があったわけではなく、中学三年生の時にたまたま見た東東京大会の「都立城東vs.関東一」の試合に感動して、「高校に入学したら野球のそばにいたい」と思ったという。当初はマネージャーとして入部したが、間宮 康介監督から「自分が会議などで練習に不在となる時も多いから、その時にノックくらいは打てるようにしておいて欲しい」というところから取り組んだノックだった。それでも、持ち前の努力と選手たちのアドバイスの末、他校と遜色なくシートノックをこなすことができるようになった。

こうしたところにも、高校野球の素晴らしさがある。
「プレーヤーとしてやりたいという気持ちも少しあって、ソフトボールもやれれば…ということも考えましたが、深川はそんな環境ではなかったので、野球のそばにいられるということで入部しました」(山田助監督)

高校から野球部に入部しようかな…という生徒たちに関しても、都立深川の間口は広い。

このままいけば、秋は再び合同チームにならざるを得ない深川の部員数ではある。
しかし、今から入部してくる生徒がいても、「みんなで受け入れながら、それぞれで成長させていかれる環境は十分にあるよ…」と、山田さんはじめ残る部員たちは、新たなチャレンジを待っている。

「ドラフト」「甲子園出場」が至上目的ではない。こうした部活動として野球をする機会を与えることは非常に大事だ。
それこそが、教育の一環としての高校野球の意義であり、100年以上の歴史を築いてきてた、本当の意味での存在意義なのではないかと。

そんなことを思わせてくれた都立深川の取り組みでもあった。夏を過ぎたくらいに、深川に部員が増えて、秋季大会を単独チームで戦えることを期待してやまない。

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この記事の執筆者: 手束 仁

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