音楽プロデューサーとしてCHEMISTRYやいきものがかりの結成・デビューなどで手腕を発揮する一方で、半世紀を超えるアマチュア野球観戦により野球の目利きでもある一志順夫。連載コラム「白球交差点」は、彼独自のエンタメ視点で過去と現在の野球シーンとその時代を縦横無尽に活写していきます。

巨人坂本を見出した大森スカウトの心情を思い起させる青山学院大の西川のユニホーム姿

 選抜高校野球大会が終わると、プロ・アマともにいよいよ本格的な球春到来で、我が野球観戦生活もにわかに忙しくなる。

 今年は不本意ながら公私ともに予定が詰まっていたが、ようやく4月17日神宮球場青山学院大対亜細亜大の2回戦に参上した。やはり、ドラフト候補の青山学院大の西川 史礁(龍谷大平安)、佐々木 泰(県立岐阜商)のプレーは気になるところだ。西川は試合開始前のシートノックから一頭地抜けた存在感を見せつける。背番号3のユニホーム姿が体格以上にデカく見える。光星学院(現・八戸学院光星)時代の坂本 勇人(巨人)に一目惚れしたという巨人の大森 剛(高松商-慶應義塾大-巨人-近鉄)スカウトも、そのプレーのみならずグラウンドでの立ち姿、佇まいに強烈なオーラを感じたことが1位指名の決め手になったといわれているが、それに近い感覚を西川に感じ取った。

 実は筆者が本業においてオーディション現場やライブハウス等で新人アーティストの発掘をする際、同じような観点でその才能を見定めることがよくあった。どんなに技量、テクニックが優れていてもステージ上で、どこか華が足りなかったり、エモーションが感じられなかったりするタイプは、仮にデビューできたとしてもブレイクに至らないケースが意外と多い。その意味では数値化できない魅力を見極めることもスカウトの重要な眼力であるのは共通項のような気がする。

伸び悩む佐々木、西川との切磋琢磨のストーリーをドラフトまで見守っていきたい

 一方の佐々木は、4本塁打を放った1年春の鮮烈なデビューが印象的だっただけに、その伸び悩みがどうしても目についてしまう。今季も不調を引きずり、前節までノーヒット、この試合でやっと初安打が飛び出したが、到底本来の姿とは程遠い状態が続いている。西川は1年時の佐々木の快進撃を横目に臥薪嘗胆、努力を重ね3年生になって遅ればせながらその才能を開花させた。

 この試合、西川はホームランを含む3安打と期待通りの活躍。結果だけ見れば、ちょっと二人の差が開いてしまった感は否めないが、佐々木の潜在能力はこんなものではない。2020年コロナ禍に開催された甲子園交流大会で明豊のサウスポー・太田 虎次郎(東洋大)から放った規格外のホームランの弾道は、いまだ網膜に焼き付いて離れない。なんとしても巻き返しを図ってもらいたいものだ。ライバル物語の行く末はまだこれからではあるが、最終学年での二人の切磋琢磨のストーリーをドラフトまで見守っていきたい。

大学No.1ショート宗山の独特の雰囲気は先輩名プレーヤー鳥越を彷彿とさせる

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