<文部科学大臣杯第76回全日本大学準硬式野球選手権大会:日本大2-3中央大>◇24日◇1回戦◇さがみどりの森県営野球場

2022年以来となる大学準硬式の日本一を目指した日本大。しかし、初戦で中央大の前に2対3で惜敗し、日本一への道は閉ざされた。

試合終了の挨拶で、日本大の主将・石田 玲央捕手(4年=東海大甲府出身)は、中央大・功刀史也内野手(4年=山梨学院出身)と熱い抱擁を交わし、涙ぐみながら何かメッセージを伝えていた。

「功刀には『ほんとに勝ってくれ。頼むよ』という一言だけ伝えました。彼とは高校時代、同じ山梨ではライバル校同士で、大学でもライバル校。一方で、選抜チームで一緒にプレーしたり、食事に行ったりするくらい仲は良かったので、『ほんとに勝ってほしい』と思ったら、自然と抱き合っていました」

偶然にも功刀は山梨学院出身、石田は東海大甲府出身と山梨を引っ張る2強から、今度は中央大と日本大という大学準硬式界の名門で主将として全国大会で対戦。何かの縁なのだろうが、石田にとってこの1年は苦しかった。

チームは3月の関東大会で4回戦敗退。春季リーグも、「負けたら引退になる試合がいくつもあった」と結果が出ない時期が続いた。全国大会出場も危ぶまれる状況に石田は、「本当に不安で夜も眠れず、散歩に出かけるのがルーティンになりつつあった」とプレッシャーの日々を振り返る。

この試合の前日も「12時に目が覚めてしまい、15分ほど散歩をしました」と言うほど、不安やプレッシャーに敏感になっていた石田。改めて名門の主将を務めた1年間が、いかに大変だったのか想像できるが、だからこそ気づき、行動できたこともある。

「全国大会出場をかけたプレーオフ直前、『チームがまとまっていない。これじゃあダメだ』と思って、全員で集団走をしました。そのときに『全国は楽しい舞台だ。そこがあと一歩まで来ているんだから、全員でやっていこう』と声掛けをしてから走ったんですけど、チームは変われたと思います。あれは主将として、貢献出来た瞬間だったと思います」

その後、プレーオフで勝利して出場した今大会の初戦の中央大との試合、石田はベンチスタートで戦況を見つめ、終盤からマスクを被った。最終回には打席も回り、「よし来た」と気持ちを入れて打席に立ったが、結果は出なかった。チームも試合に敗れ、日本一の目標を果たせなかったが、「このメンバーだったから、最後は全国まで来ることができた」と悔しさはあるものの、仲間たちへの感謝の思いが強い。

と同時に、「準硬式を通じて良い思いをさせてもらいましたし、楽しかったです。ここで野球を終われてよかった」と準硬式での4年間に対しても感謝の言葉を残した。

「1番、チームが力を発揮できる」という理由で、主将でありながらベンチで仲間たちに声援を送りながら、時にはブルペンで投手たちの準備に奔走した石田。思ったような結果ではなかったかもしれないが、この経験が今後の人生に生かされることを願いたい。