6月30日、第106回静岡大会の開会式で奇抜なユニフォームを着たチームが観客の目を惹いた。磐田東高校の野球部だ。
これまで白のピンストライプだったのが、全身が黒く見えるほど濃い藍色のピンストライプに代わったのだ。
「着任して、野球部のイメージを変えたかった。有名なものには代名詞となる色がありますよね。たとえば“フェラーリは赤”みたいな。磐田東のスクールカラーが群青色ということもあり、そのイメージを定着させたくて、今回のユニフォームを採用したんです」
そう答えるのは、赤堀佳敬監督だ。
健大高崎時代のトレーナー、教え子たちの力も借りて作った「チームの骨格」
4月に就任した赤堀監督は、まず選手の意識改革を行った。
「着任当初、選手たちに目標を聞くと、『甲子園に行きたい』といいました。その意気込みは大事です。ただ本当に目指せる位置にあるのか、それが問題でした。甲子園を目指せるだけの取り組みと練習をする――。そこからのスタートでした」
健大高崎で指導してきた走塁理論、打撃理論を教えるとともに、健大高崎で選手のフィジカル強化を担ってきた塚原謙太郎トレーナーとも契約を結んだ。月3回ほど塚原トレーナーはグラウンドに来ているという。さらに大学生となった健大高崎卒業生をグラウンドに招き、磐田東の生徒たちにアドバイスを送る機会も作った。
こうして赤堀監督はチームの骨格を作り上げていった。
赤堀監督はこの3ヶ月の選手たちの成長に手ごたえを感じている。
「以前よりできることが増えました。選手自身も手応えを感じているようです。『こういうこともできるんだぞ』という思いが大きくなったので、戦い方を見ても自信や意欲を感じます」
赤堀監督は選手に野球の奥深さを伝えながら、成長を促している。
ユニフォーム変更のきっかけとなった“二人の監督”
話題となったユニフォーム変更についても触れていきたい。きっかけは赤堀監督が「すごいお2人です」と語るサッカー部の山田 智章監督と剣道部の内田 勝之監督が関係している。
「磐田東の剣道部、サッカー部は全国でも有名です。強豪に押し上げた山田監督、内田監督は名将ですから、少しでも追いついて、部活動でも学校を盛り上げていきたいと思っています。また両部とも、部活動着が学校のスクールカラーである群青色を使っているので、野球部もこれにあやかってユニフォームを変えたんです」
山田・内田両監督は教師としても赤堀監督の目指すべき存在だという。
「山田監督は募集対策室の室長で、私も生徒募集をやりますので、いろんなアドバイスをもらいます。私と内田監督は同じ学年の先生で、さらに主任であり、チームのことも相談させていただいています。2人は部活動の指導者として尊敬していますが、教員としても上司にあたり、いろいろ学ばせてもらっています。私も2人のような教員になっていきたい」
「われわれはチャレンジャーですから、相手はどこだろうと、自分がやるべきことに集中します。とにかく自分たちのコンディションを保つことです。“夏の大会の雰囲気”という外発的なもので気持ちを上げる、気合が入るというのではなく、普段の練習から『やってやろう!』という気持ちが内側から湧き上がるようにしていきたいですね」