夏の甲子園出場校が出そろった。この1カ月あまり開かれた地方大会は、多くのドラフト候補にとって最後のスカウトへのアピールの場だ。

 全12球団のスカウトが注目する“ドラフト上位候補”はどんなアピールができたのか? 今回は野手の地方大会でのパフォーマンスを振り返っていきたい。今年は例年以上に遊撃手のドラフト候補が多く、そして希少価値が高い捕手に注目が集まった。プロ志望や多くの球団スカウトが集まった選手を対象に振り返っていきたい。

アピール度 A=春よりも評価を上げた、B=評価変わらず

甲子園に出場する超高校級野手4人

石塚 裕惺内野手(花咲徳栄:甲子園出場)
埼玉大会成績:26打数12安打1本塁打11打点 打率.461 アピール度:A

 夏前から「世代NO.1スラッガー」と呼ばれていた石塚 裕惺内野手(花咲徳栄)は、埼玉大会でも安定感抜群だった。対戦相手のマークは厳しかったが、際どいコースはファウルで粘って、甘く入ったストレートをしっかりと弾き返し、長打にした。タイブレークとなった西武台戦では点差を突き放す適時二塁打を打ったように、ここぞという場面で結果を残せる勝負強さは恐れ入る。

 また、守備も三遊間の深い位置から強肩を披露してアウトにする好プレーを見せるなど、春から上達の跡が見えた。埼玉大会の調子を持続できれば甲子園でも主役になれる選手だ。


宇野 真仁朗内野手(早稲田実業:甲子園出場)
西東京大会成績:22打数7安打2本塁打8打点 打率.318 アピール度:A

 高校通算64本塁打のうち、10本塁打以上を木製バットで打っている宇野 真仁朗内野手(早稲田実業)。初戦の明大八王子戦では5打数0安打だった。空振り三振、見逃し三振。とにかくバットが出ない。甘い球を見逃す。悪循環が続いたが、5回戦の日本学園戦では本塁打を含む4打数2安打2打点の活躍。そこから調子を上げ、決勝戦ではいきなり先制二塁打を放ったが、4四死球ととにかく勝負を避けられた。西東京大会では2本塁打を記録し、木製バットでも長打力を発揮できることを証明した。

 日大二戦では四球の出塁からすぐさま二盗を仕掛けるなど、走塁面でもアピールした。春までは三塁だったが、夏では大会直前にショートに転向。本人は「もともとショートだったので違和感はなかった」と語るように、フットワークも軽快で、スローイングもショートスローのフォームで安定していた。三塁よりも遊撃手のほうが合っており、守備面でも評価を上げた。上り調子で甲子園に乗り込み、選手権大会でも大会の主役に相応しい活躍を見せることができるか注目だ。