10月24日に行われるドラフト会議。今年も数々の甲子園のスターたちがプロ志望届を提出した。センバツ優勝の健大高崎からは世代NO.1捕手の箱山 遥人、そして大型遊撃手・田中 陽翔がプロ志望届を提出した。

 田中はロッテ、ヤクルトで大型左腕として活躍した充氏を父に持つ。東練馬シニア時代から本塁打を打てる大型遊撃手として活躍し、スーパー中学生として注目された。

 3年春は強打の遊撃手としてチームのセンバツ優勝に貢献。夏は群馬大会、甲子園合わせて13安打を放った。これはプロ志望届提出済みの遊撃手の中では石塚 裕惺内野手(花咲徳栄)と並んでトップの数字である。183センチ83キロと上背もあり、高校通算22本塁打を記録している。

 そんな田中は、もともと大学進学の意向を示すコメントを残していたのだが、この9月に急転直下、プロ志望に変わった。なぜプロ志望に切り替えたのか、そしてこの1年の活躍の要因に迫った。

センバツ優勝が自信に

――もともと進学希望と聞いていましたが、なぜプロ志望になったんですか?

田中 夏の県大会、甲子園を振り返ると、自分が思った通りのプレーができたので、もっと高い舞台で挑戦したいと思いました。

――センバツの時点では、記者たちにも「高卒プロはまだ早い」と言っていましたが。

田中 当時からプロに挑戦したい気持ちもあったんです。さまざまな大学から声をかけていただいた上で、自分で考えた結果が高卒プロ志望です。

――夏は合計13安打、春の関東大会では7打数6安打と大当たり。何が変わったんですか?

田中 センバツの優勝をきっかけに打撃に自信が持てるようになりました。「こういうふうにやれば打てるんだな」というのが自分の中で明確になりました。打席の中で余計な事を考えることなく入ったら、打てるようになりました。

――「こういうふうに打てれば…」というのを具体的に言うと?

田中 自分のプレーを客観的に見直すようになったのが大きかったです。2年秋までは来た球を打ち返すという考えでやっていましたが、センバツが終わったあとに、自分たちの試合の見逃し配信を見直して、自分の打席と守備機会を再生したんです。それを見た時、「もっとこうやって打てばいい」と思うところがありました。センバツでは自分の打撃はできなかったんですけど、センバツの経験があったからこそ、夏で良い結果ができるようになったと思います。

 夏は1番打者になりましたが、1番打者だからといって、ちょこちょこやるのではなく、どっしりと構えて、強い打球を心がけてやってきました。

夏に大活躍も「もっと打てた」

智弁学園戦での田中陽翔のバッティング

――センバツ以降、ホームランが増えました。春の関東大会の宇都宮商戦での特大本塁打を見て、すごく変わったなという印象がありました。

田中 センバツが終わってから2〜3週間ぐらい打てない時期が続きました。そんな中で自分でもなぜ打てたのか分からないホームランでした。あの試合、一打席目にレフトフライを打ったんですが、良い感覚がしたんです。次の打席に打てる気がしてきたら、ホームランを打てたという流れです。あのホームラン以降、調子は右肩上がりになりました。

――夏の群馬大会は厳しいマークの中でも、しっかり打ち返しているのが印象的でした。

田中 マークされている中でも打ち返すのが良い打者だと思っています。マークされることを想定して、いろんなコースを打ち返す練習をしてきました。

――決勝の前橋商戦では149キロ右腕の清水 大暉投手の速球を捉えて本塁打を打ちました。

田中 自分の前の打者が二者連続三振に終わって、雰囲気が悪い中での打席でした。最初はホームランを狙っていなかったんですけど、2ボールになった瞬間、これはいけると思って、狙って打ったんです。自分は速球派の投手は得意なので、打てない感じはしませんでした。

――甲子園2回戦の智弁学園戦でも好左腕の田近 楓雅投手から3安打を打ちましたね。

田中 チェンジアップが良い投手ということで警戒していました。ただ自分の打席のときはスライダーが多く、まっすぐのような軌道で曲がっていくものでしたので、それほど苦ではありませんでした。途中からスライダーに狙い球を絞っていきました。3打席ともスライダーを打ち返しました。

――夏の大会の安打13本はショートのプロ志望選手では石塚選手(花咲徳栄)に並ぶ記録数です。

田中 自分ではそんなに打った感じはしなくて。「もっと打てたんじゃないか」と思っています。

――田中選手の守備を見るとダイナミックかつ堅実に打球をさばいている印象を受けました。どんな意識で守っていますか?

田中 全体練習が終わったあとの自主練習の成果が大きいと思います。足の使い方はどれが合うのかを考えました。1学年上に半田 真太郎さん(明治大)というすごく上手いショートがいて、半田さんぐらいスピードがあって、足を使わないと足が速い選手をアウトにできないと思って、半田さんから学びました。

 とにかく一歩目がしっかりと切れることが大事で、それができると良い捕球位置で捕れるので、打者が打つ瞬間に集中して守っています。

プロを目指せるチャンスは3回しかない

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