<秋季東京都高校野球大会:帝京 1-0 佼成学園>14日◇2回戦◇スリーボンドスタジアム八王子

 ハイレベルの投手戦は、一つのプレー、一つの駆け引きが大きな意味を持ってくる。試合後帝京の金田 優哉監督が「ナイスゲームでした」と語る、帝京・岩本 勝麿(2年)、村松 秀心(2年)と佼成学園・熊谷 憲祐(2年)の投げ合いはまさにそういう試合であった。

 1回表佼成学園は左前安打で出塁した2番・市川 烈外野手(2年)が3番・元山 元太内野手(2年)の遊ゴロで二塁に進み、4番・中村 慈胤内野手(1年)の左前安打で本塁を突いたが、左翼手・立石 陽嵩(1年)の好返球でアウトになった。「うちで一番速いランナーなので走りましたが、相手の守備が勝りました」と佼成学園の藤田直毅監督は語る。

 結果として、初回の攻防が佼成学園としては大きく響く。佼成学園の熊谷は、夏の大会の後はあまり投げていなかったが、秋の大一番にしっかり合わせてきた。帝京打線に単打は打たれても、連打や長打は打たれない。

 帝京の先発、背番号1の岩本は、「変化球はよくありませんでしたが、ストレートは良かったです」と語るように、最速142キロの速球でぐいぐい押して、2回以降は佼成学園に得点のチャンスを与えない。

 この試合の勝負の分かれ目になったのは、6回裏の攻防だ。帝京はこの回先頭の2番・梅景 大地内野手(2年)が左前安打で出塁する。続く3番・安藤 丈二内野手(1年)の投前のバントを熊谷は二塁に送球したが、これが野選となる。さらに捕逸もあって、無死二、三塁となる。帝京は4番・立石は三振したがなおも一死二、三塁。続く5番・飛川 洸征(2年)の2球目にスクイズを仕掛けるが、外される。三塁走者は帰塁したものの、一度失敗すると、続けてスクイズのサインは出しづらい。けれども、前田三夫前監督は、そうした場面でも、続けてスクイズを敢行していた。そして金田監督もやはりスクイズを敢行し、飛川がしっかり決めて、帝京が1点を先制した。「飛川がよく決めてくれました」と金田監督は言う。

 一方、佼成学園の藤田監督は、「前田さんなら、もう1回外していたと思います。甘かったです。それにしても受け継がれていますね」と語る。投手としては、続けて外すとカウントを悪くするから、外しづらい。まさに1点を巡るヒリヒリするような駆け引きである。ただこのピンチは、元はと言えば、熊谷の野選から始まっている。佼成学園の藤田監督は、「熊谷はよく投げました。しかし自分のミスからこうなった。野球の厳しさを学んでいると思います」と語る。

 8回表佼成学園は、死球と内野安打などで一死一、三塁のチャンスを作り、打席には3番の元山を迎える。ここで帝京は岩本に代えて、右翼手として出場していた村松をマウンドに送る。「ランナーが出た時から気持ちを作っていました」と語る村松は、3番の元山を三振、4番の中村を中飛に抑え、得点を許さない。佼成学園の熊谷もその後は得点を許さず、1-0で帝京が勝利した。

 勝った帝京は3回戦で関東第一と対戦する。夏の東東京大会の決勝戦の再戦である。「楽しみでしかないです」と金田監督は言う。この日のような接戦は、選手を成長させる。次は伝統のライバル対決だけに、好勝負になりそうだ。

 一方敗れた佼成学園の熊谷は、「今日はミスもあったので、点数としては60点くらいです」と語る。それでも、春季大会では日大三を破り、この秋は帝京を苦しめた。そのことは「自信にはなります」と熊谷は言う。この試合で得た自信と野球の厳しさの教訓で、さらに成長していくことを期待したいと感じさせる、この試合の投球であった。