10月24日のドラフト会議へ向けて、各球団はスカウト会議で最終確認段階に入っている。ドラフト候補の面談も行い、いよいよ本番が迫っている。今年は長身投手の評価が上がっているが、中でも身長200センチの菊地ハルン投手(千葉学芸)の評価が高い。夏は県大会4回戦敗退に終わったが、春の大会と比べると進化が見えた。そんな菊地について迫っていきたい。

 夏の試合を見るとストレートの球速は常時130キロ後半〜140キロ前半だが、重量感と威力があり、空振りも奪うことができる。ストレートのコントロールも春と比べると改善が見えた。140キロ前半だとドラフト候補に挙がる高校生右腕の中では平均的だが、ストレートの角度、回転数には非凡なものがある。

 ストレートだけではなく、スライダー、フォーク、カーブの精度も高く、その軌道を見るとそれぞれ回転数が高く、低めに鋭く決まって、ストライクも取れる。春先はフォークの割合を多めにしていたが、元々得意だったカーブの割合を増やしてカウントを稼ぎながら、追い込んでから自慢のストレートでねじ伏せる配球だった。5回無失点の好投を見せた夏初戦の佐倉戦ではストレート、変化球のコンビネーションもよく、しっかりと追い込んでからフォークで三振を奪うことができており、引き出しが広がった。

 速球、変化球も器用に投げているが、その理由はフォームのバランスが良いことにある。セットポジションから始動して、左足を上げたあと、軸足である右足にしっかりと体重を乗せるのが上手い。200センチの長身を活かしたオーバースローで、うまくヒジを立てて投げている。高倉伸介監督は佐倉シニア時代から菊地を見ており、当時からヒジの使い方が良かったこと、そして器用に変化球を投げられる点を買っていた。この点はプロスカウトからも評価をされているようだ。

 投球以外の技術も高く、牽制のタイミングも絶妙で、牽制で走者を刺す場面もあった。クイックもそつなくできて、フィールディングの動きも悪くなく、投手としてしっかりと鍛え上げられている。

 それでも細かい制球力、走者を背負った時の投球など課題はまだある。高倉監督は今後についてこう語る。

「だいぶ成長はしましたが、完成はしませんでした。ただ、この伸びしろの部分をスカウトの方から高く評価されています」

 速球が投げられてもコントロールが悪い投手はなかなか伸びない。しかし菊地の場合はフォームのバランスの良さ、指先感覚の良さが備わっており、将来活躍できる要素を持った投手である。夏の大会が終わってからは専属トレーナーが体作りを行い、体重は102キロから110キロへ増量。球速のアベレージも130キロ後半〜140キロ前半から安定して145キロを出す頻度が多くなっているという。150キロを当たり前に出す日もそう遠くないかもしれない。

 現在は7球団からの調査書が届いている。間違いなく高卒プロに行ける素材だろう。

 では、プロではどんな投手になるのか想像してみよう。高校2年時はストレートとカーブのコンビネーションで勝負していたので、オリックス・山下 舜平大投手(福岡大大濠)のようなタイプに育つと想像していたが、この1年間で見事に変化球を操る投手になった。このままいけばソフトバンクのエース・有原航平投手(広陵)のような投球スタイルを極めることができるのではないか。

 プロの世界でも想像を超える成長を見せていきたい。

<菊地ハルン>
父はパキスタン人、母は日本人 兄・菊地レハンは関東第一でプレー
右投げ右打ち 200センチ110キロ
中学時代は佐倉シニア出身で控え投手。
同級生は石塚 裕惺(花咲徳栄)
千葉学芸では1年夏からベンチ入り
公式戦では3年春からエースとして活躍し、県大会の千葉敬愛戦で初の完投勝利を挙げた。
県大会後の日大二の練習試合で、スカウトのスピードガンで最速149キロを計測した。
3年夏では4回戦敗退に終わった。

【菊地ハルンの投球動画!】