<関西六大学野球 秋季リーグ戦:大阪商業大 2-1 大阪経済大>16日◇第7節3回戦◇マイネットスタジアム皇子山
大阪商業大が逆転サヨナラ勝ちでリーグ新記録の6連覇を達成した。
勝った方が優勝となる一戦は痺れる投手戦となる。大阪経済大はドラフト候補の最速151キロ右腕・林 翔大(4年=乙訓)が8回まで3安打無失点。大阪商業大も福島 孔聖(3年=広陵)から鈴木 豪太(3年=東海大静岡翔洋)の継投で8回まで無失点に抑えた。
試合が動いたのは9回表、一死一、二塁から4番・元山 晶斗(4年=高知商)の左前適時打で大阪経済大が1点を先制。その裏の大阪商業大は安打と四球で無死一、二塁のチャンスを作り、ドラフト上位候補の4番・渡部 聖弥(4年=広陵)に打順が回る。
ここで安打が出れば、リーグ新記録の通算120安打を達成。長打になれば、一打サヨナラ勝ちの可能性もある。富山 陽一監督は「打て」とベンチから渡部に指示を出した。
しかし、「自分が打ったとしても還せる自信はありましたが、ワンアウト二、三塁を作った方が勝ちに近いと思ったので」と自らの意思でバントを選択。一塁線に絶妙なバントを決めて、一死二、三塁とチャンスを拡大した。
大学生活で犠打を決めたのは1年秋以来、3年ぶり2回目。試合で滅多にすることはなかったが、日々の練習では緊迫した場面でバントを想定した練習をしており、「全く苦手意識もなかったし、気持ちで絶対成功すると思っていました」とバントにも自信を持っていた。一塁側に転がしたのも明確な根拠があったという。
「林は凄くフィールディングが上手い選手で、バントをピッチャー前、特に三塁側にやってしまうとアウトになってしまう。絶対に打つと思って守備はチャージが来ていなかったので、ファースト側のライン際に転がそうと思っていました」
「ひょっとしたら最後になる打席でバントができるのは素晴らしい人間じゃないですかね。そういう子だから色んな意味で成功すると思います」と富山監督は絶賛。次打者の春山 陽登(2年=敦賀気比)は感動のあまり涙を流していた。
その春山は初球を振り抜いたが、遊撃へのゴロとなり、三塁走者は本塁に突っ込む。タイミングはアウトだったが、送球を捕手が落球。まさかの形で大阪商業大が同点に追いついた。
その後、二死満塁となり、蜷川 大(3年=広陵)が代打で起用される。今季は正捕手として出続けていたが、前日の試合からベンチスタートになっていた選手。「最後はあの子しかいない」と富山監督が信頼して送り出した。
高校時代からの先輩である渡部のバントを見た蜷川は「これで負けたら許されない」と燃えていた。「何が何でも打ちにいこうと思っていました」と1ボールからのストレートをフルスイング。打球は三遊間を破る適時打となり、大阪商業大がサヨナラ勝ちで6季連続27回目の優勝を決めた。
練習や礼儀作法の指導を含めて関西で一番厳しいと評判の大阪商業大。普段から緊張感を持って取り組んでいるからこそ、優勝決定戦の終盤でも力を発揮できると渡部は言う。
「日々の練習からプレッシャーをかけて練習してきているので、土壇場に強い選手ばかり。土壇場で消極的になることなく、みんな積極的に前に出てプレーできているので、そういうところが商大の強みだと思っています」
苦しい試合を乗り越えて、今季も栄冠を掴んだ。11月1日から開幕する関西地区大学野球選手権大会を勝ち抜けば、明治神宮大会の出場が決まる。短期決戦でも持ち前の勝負強さを発揮しそうだ。