5勝20敗―。9月の歴史的な大失速で4位に終わった広島。8月末には首位だったのが、一気にCSも逃してしまった。

 そんな広島は11日、明治大のショート・宗山 塁内野手(広陵)の1位指名を公表した。広島が大学生野手を1位指名するのは10年ぶり。大学生内野手としては、カープのレジェンドの野村謙二郎氏以来じつに36年ぶりのことである。

 東京六大学通算100安打をクリアし、芸術的な守備と、人気を呼びそうな端正な顔立ち。1位として申し分ない逸材だが、ファンの反応は芳しくない。それはなぜか。

宗山に求める成長曲線はレジェンド・ノムケン型!

 広島の大失速の原因は打線にある。

 まずチーム打率.238はセ・リーグ最下位で、12球団全体でみてもオリックスに並ぶ全体10位タイの数字。415得点も全体10位で、52本塁打は12球団最下位。とにかく爆発力がなかった。チーム最多本塁打は坂倉 将吾捕手(日大三)の12本で、二ケタ本塁打は坂倉のみだった。和製大砲・末包 昇大内野手(高松商)が9本塁打を打ったのは希望だが、スタメンを見ると、プレミア12代表となった小園 海斗内野手(報徳学園)、球界屈指のショートへ成長した矢野 雅哉内野手(育英)ら、宗山と同じ巧打者タイプが多く、右のパワーヒッターが少ない。また、外野手の選手層が薄い。

 つまり、広島の喫緊の補強ポイントは「右打ち」で「長距離砲」の「外野手」であって、宗山ではないのだ。

 このポイントに該当するのが、大阪商業大・渡部 聖弥外野手(広陵)、青山学院大のスラッガー・西川 史礁外野手(龍谷大平安)の2人である。即戦力で活躍できるかは別として、ぜひとも獲得したい選手である。

 広島が宗山1位を明言したのは、地元出身者ということもあるだろうが、試合の勝敗のカギを握る二遊間の守備をガッチリ固めたいためだろう。

 宗山を獲得した場合、もちろん二遊間の層は非常に厚くなる。大卒4年目の矢野が今季ショートのレギュラーを獲得したが、矢野よりも打者として潜在能力が高い宗山が入ることで競争は激化する。35歳になった今年も136試合106安打を打っているセカンド・菊池 涼介内野手(武蔵工大二)はまだ健在だが、この3年以内に成績を落とす可能性を考える必要がある。「ポスト菊地」が外野手獲得よりも優先されたのだろう。


渡部聖弥(大阪商業大)、西川史礁(青山学院大)

 もし宗山1位指名できれば、期待されるのは野村謙二郎のような成長曲線だ。野村の入団後の成績を振り返ると、

1年目 88試合 39安打 0本塁打 打率.258
2年目 125試合 149安打 16本塁打 打率.287
3年目 132試合 170安打 10本塁打 打率.324

と大学生野手としては理想的な成長曲線を描いた。宗山が同様の成長をすれば、カープの未来は明るいものになりそうだ。

2位以降で強打の外野手の指名はあるか?

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