今季、49勝91敗とダントツの最下位に終わった西武。この4年間はすべてBクラスで二度の最下位。課題は明白、打線の力不足にある。

 チーム打率.213、総得点350はともに両リーグ最下位。得点にいたってはソフトバンクの607得点と250以上の差があり、そのままゲーム差につながった。規定打席到達者はベテランの源田 壮亮内野手(大分商)、外崎 修汰内野手(弘前実-富士大)のみ。最多打点は外崎の41だった。ここまで苦しんだのは、ドラフトでの野手指名の選別と育成がうまくいっていないからだ。

4年で2人の大学生スラッガーを指名も、伸び悩む

 2020年、西武は桐蔭横浜大の渡部 健人内野手(日本ウェルネス)を1位で指名した。渡部は大学4年秋に7本塁打を記録し、当時の大学生野手の中では上り調子で、選択としては悪くなかった。しかし、ここまで通算74試合でわずか7本塁打にとどまっており、同じ年に指名された中央大・牧 秀悟内野手(松本第一・DeNA2位)がこの4年間で98本塁打、近畿大・佐藤 輝明内野手(仁川学院・阪神1位)も4年連続で二ケタ本塁打と大きな差をつけられてしまった。

 2022年には早稲田大の蛭間 拓哉外野手(浦和学院)を指名。蛭間は東京六大学では通算13本塁打。大学日本代表経験もあり、将来の主軸として指名した。しかし2年間で3本塁打のみ。こちらも大卒1位選手としては物足りない成績だ。

 パ・リーグを連覇した2018年〜2019年は「山賊打線」と呼ばれるほどの破壊力があった。この強力打線を担ったレギュラーのほとんどがドラフト上位指名選手で、森 友哉捕手(大阪桐蔭)、山川 穂高内野手(中部商)は2013年の1、2位コンビである。2019年にいたってはこの2人で、225打点を記録しており、今年の総得点の64%を稼いだ。

 ポスト山賊打線を見据えて野手1位指名を続けていたが、それがうまくいかなかったのが西武の現状だ。

 森、山川が入団5年目の2018年から本格化したように、今年の指名選手が1年目から救世主になることを望むのは酷だ。それでも、今年のドラフト指名で主力として活躍する野手を必ず獲得しなければならない。

「宗山塁1位」「スラッガー1位」のそれぞれのメリット

 現在、ファンの1位指名に対する意見は、スラッガー獲得か大学生NO.1ショート・宗山 塁内野手(広陵-明治大)の獲得かで二分されている。西武の一番の課題は、数年後に1年通して活躍できる主力級の野手を育て上げることなので、どちらも正解だと考えられる。

 まず宗山を勧める理由を考えてみたい。西武不動の遊撃手であり、主将も務める源田の後継ぎにふさわしい実力を持っている。東京六大学通算104安打、10本塁打、打率.334。芸術的な守備に加え、今年の大学生ショートでは最も打てる選手であり、NPBの世界でも打率3割前後、二ケタ本塁打は毎年残せる力があり、守備でもゴールデングラブ賞常連候補のショートに成長する可能性がある。早生まれの源田は32歳の選手たちと同世代で、近い将来、スピード低下、守備力低下が予想される。宗山指名の選択肢は十分にアリだ。ただ、すでに広島が1位指名を公表しており、競合は必至。競合してまでも指名するのか。指名直前まで結論が出ることはなさそうだ。

 続いてスラッガーの獲得はどうだろう。打撃タイトル上位に入るスラッガーが育てば、西武の得点力は大きく上がる。僅差の試合が少なくなれば、投手陣の負担も減り、成績が良化する可能性が高い。

 指名候補は青山学院大の西川 史礁外野手(龍谷大平安)、大阪商業大の渡部 聖弥外野手(大商大)の2人になる。西川は本塁打量産タイプ。打撃練習から圧倒的な飛距離を見せる。1年目から二ケタ本塁打を放った阪神の森下 翔太外野手(東海大相模-中央大)の大学時代と比べても見劣りする点はない。うまく嵌まれば、1年目から二ケタ本塁打は期待できるだろう。一方の渡部は打率と打点を稼ぐタイプ。右中間にも本塁打が打てて打撃の幅が広い。この2人は1年目から一軍でかなりの打席数を与えるべきだろう。

 宗山、西川、渡部……。とにかく野手を1位指名し、早急にブレイクさせることが西武復活の最低条件だ。


渡部聖弥(大阪商業大)、西川史礁(青山学院大)

重要な2位指名も狙いは1位と同じ

1 2