今秋ドラフトは青山学院大の西川 史礁外野手(龍谷大平安)や大阪商業大の渡部 聖弥外野手(広陵)ら、大学生のスラッガーが注目を浴びている。中でも、左の強打者として指名を期待されているのが、早稲田大の強打者・吉納 翼外野手(東邦)だ。

 東邦時代にセンバツ大会優勝を経験している実力者は、大学進学後も中軸を担い、今春のリーグ戦でも7季ぶりのチームの優勝に貢献している。パワーを自慢にプロ入りを目指す大砲候補に心境を聞いた。

骨折を我慢してセンバツ優勝

――東邦に進学した理由を教えてください。

吉納 出身が愛知で、自分が中学校2年生の時に今の中日の藤嶋さんの時の甲子園の逆転劇を見て憧れたんです。東邦の山田監督から声をいただいた時は、迷わず行きたいなという気持ちでした。まさか自分があのユニフォームを着て…っていうのは想像ついてもなかったですし、すごい嬉しいなって感じでした。

――センバツ大会で活躍できた要因はどういった点だと感じますか?

吉納 センバツ出場を決める県大会の直前に有鈎骨を骨折してしまって、メンバーに入れるか入れないかくらいだったんです。コーチから手の状態を聞かれて、正直痛かったですけど、もしこれで出なくて後悔するのは嫌だなと思ったので、我慢して出たっていうのがありました。そこから優勝するまで出続けることができて良かったです。

 憧れていた甲子園という舞台で優勝したというのは純粋に嬉しかったです。野球人生にとって価値の残る財産になったかなと思います。

――当時の東邦には熊田 任洋内野手(現・トヨタ自動車)や、石川 昂弥内野手(現・中日)もいましたが、先輩たちの背中はどのように感じましたか?

吉納 入学した当初は全員レベルが高すぎて憧れてばかりでしたけど、プレーする以上は試合に出たいっていう気持ちが強かったですし、ポジションは違えど負けたくないっていう気持ちはありました。その気持ちがずっと高校の時からあったので、今もこうしてプロに挑戦する姿になれたんじゃないかなと思っています。

――高校野球通算で44本打ちましたけど、高卒プロという気持ちはなかったですか?

吉納 もちろんあったんですけども、コロナで試合する機会がなくて、中々アピールするチャンスもなかったので……。その中で「早稲田から声がかかった」っていうのを部長先生や監督さんからいただいたんです。「大学でもしプロに行けなくても、早稲田に行っておけば、人生にとっていいものになるから」という声もあったので、自信をもって早稲田の門を叩いたって感じです。

早稲田大野球部で人間的にも成長

――早稲田大に入学した時の雰囲気はどう感じましたか?

吉納 色々なことが初めてでルールとか規則とかが一気に変わりました。「日本の大学生の模範」を意識して生活しています。

――選手を見ているとグラウンドの前にある銅像に毎回挨拶していたり、バッティング練習終わったらみんなでライン引いたりと、皆さんの意識が徹底されているんですね。

吉納 野球以外の部分からってよく言いますし、これが早稲田のやり方なので。早稲田の野球部員としてしっかりと行動行くべきだなと思っています。

 最初は本当に意味あるのかなって思いましたけど、学年が上がるに連れていろんな人と話す機会も増えて、早稲田の練習試合に来ると「グラウンド施設がすごいね」」と言われて自分たちがやってきたことが間違ってなかったと感じました。本当に模範となっていると思っています。

 基本に返るとやっぱり挨拶だと思います。人と接する場合はまずは挨拶から入ると思いますし、自分のアピールポイントとかを見てもらうんだから、そういうところはしっかりしないといけませんよね。僕が二年生の時の当時のキャプテンだった中川 卓也(内野手=現・東京ガス)さんには、いろいろ指導してもらいましたね。

――中川さんにはどんな言葉をかけられましたか?

吉納 以前は寮に入ったら朝ごはんの時間で朝の整備をせず、練習が始まる 10分前にグラウンドに降りていたんですけど、「同期がやっているのを手伝わないと、自分が神宮でプレーする時に仲間からも応援されなくなるぞ」という言葉をいただいて、そこから補助であったりとか、整備をしてくれる同期とか、学年が上がっても後輩に対して感謝する気持ちを持つようになりました。

――六大学でのプレーはどうでしたか?

吉納 神宮球場の雰囲気に圧倒されていましたし、実際に打席に立つと全然バットが振れなかったです。「この世界でやっていくのは無理かもな」と思ったぐらい最初は挫折していました。でもどうしてもうまくなりたくて、その気持ちがあったからこそ、今まで活躍できたと思っています。最初は甲子園のセンバツ大会より緊張しました。

――プロの選手で参考にしている選手はいますか?

吉納 オリックスにいた吉田 正尚(外野手=現・レッドソックス)選手です。一般的なプロ野球選手に比べて背が高いわけじゃないですけど飛ばせる技術があって、動画を見てフォームを真似したり、参考にしています。

――今春のリーグ戦の早慶戦で二本塁打を打ちましたね。

吉納 あの試合に関して言えばもう完璧な試合でした。それまでの試合がなかなか良くなくて、ほかのメンバーが頑張ってくれたって中での優勝がかかった早慶戦でした。別に僕がやってやろうっていう気持ちはなく、みんなで頑張ろうっていう気持ちで打席に入りました。その気持ちが良かったかなって思います。

――秋のリーグ戦でも東京大戦で2試合3発打ちましたけど、最後にアピールできている感触はありますか?

吉納 大きく変えたわけではないですけど、フォームを修正して、ボールの見かたに対してのアプローチが夏のキャンプからしっかり形としてできてきたので、それなりにはできるとは思っています。

三冠王を視野に

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