<秋季東京都高校野球大会:帝京3-2関東第一>20日◇3回戦◇都営駒沢球場

 この夏の甲子園大会で準優勝した関東第一帝京は東東京大会の決勝戦で敗れた。その両校が3回戦で早くも激突した。帝京は当然リベンジに燃えている。

帝京の先発・村松 秀心(2年)が1番打者、関東第一の先発・坂本 慎太郎(2年)は3番打者と、両チームの先発投手が打者としても重要な役割を担っている。

 1回表帝京は1番・村松が粘って四球で出塁したが、左腕の坂本が素早い牽制で村松を刺し、3人で攻撃が終わる。

 3回までは両チーム無得点で終わり、4回表帝京の攻撃を迎える。この回先頭の1番・村松が中前安打で出塁し、3番・梅景 大地内野手(2年)の犠打で二塁に進み、4番・立石 陽嵩外野手(1年)が3球目を叩くと、打球はレフト柵越えの2ランになり、帝京が2点を先制した。「打ったのは狙っていたストレートです。ホームランは練習試合を含めても、高校に入って初めてです」と立石は語る。

 立石は、2回戦は不振で4番打者ながら途中で代打を送られていた。「前は打たなければならないという気持ちから、迷いが出ていました。今は気持ちの面で、迷いをなくしてやれました」と立石は語る。

 立石に本塁打を打たれた坂本だが、4回裏の攻撃では、先頭打者で打席に立ち、左前安打を放った。しかし攻撃が続かず、関東一は得点できない。

 6回表帝京は9番・池田 大和内野手(1年)が三塁打を放った後、セーフティースクイズで本塁に突入することができず二死になったが、その後、2人が四球で出塁し満塁になる。ここで関東第一は坂本を中堅手にし、左腕の松澤 琉真(2年)を登板させた。しかし松澤は4球目にワイルドピッチをして池田が生還。帝京は貴重な追加点を挙げた。

 けれども関東第一も、それですんなり勝てる相手ではない。7回裏関東第一は2つの死球で出塁したが、得点はできない。それでも村松に、この回だけで24球を投げさせた。そして8回裏は二死後、2本の安打で一、二塁とし、6番・井口 瑛太内野手(1年)のライトへの安打で二塁走者の越後 駿祐内野手(2年)は生還した。けれども井口の二塁への進塁は阻止して3アウトになった。「守備に関しては、しっかり練習しています」と帝京の金田優哉監督は言う。東東京大会の決勝戦は、守備の乱れが敗因の一つになった。それだけにこの秋の帝京は守備、特に外野手との連携をかなり鍛えている。関東第一はこの回1点止まりで、9回裏の攻撃を迎える。

 9回裏関東第一は、この回先頭の途中出場の7番・大澤 歩夢外野手(2年)が二塁打で出塁。続く8番・中濱 一葵捕手(2年)の左前安打で無死一、三塁。さらにワイルドピッチがあり、大澤は生還できなかったものの、中濱は二塁に進む。そして1番・小林 響葵(2年)が右犠飛を放って大澤が生還して1点差に迫る。それでも帝京の村松は踏ん張り、代打・田村 渉(2年)を三振に仕留め、3-2で帝京が激戦を物にした。

 夏の甲子園で準優勝の関東第一だが、来年春のセンバツ出場は絶望的になった。「選手たちは勝つことが大変だということが、改めて分かったと思います。練習試合が少なかったということもありますが、今のままでは厳しいです」と関東第一の米澤貴光監督は言う。今後の焦点になるのは、坂本 慎太郎の起用法だろう。経験が豊富でマルチな才能を持った選手であることは確かだ。その才能を投手との二刀流にするのがいいのか、俊足を生かして基本的に野手でいくのがいいのか。いい選手だけに今後が注目される。

 勝った帝京はこの試合、打のヒーローは本塁打の立石だが、全体としては完投した村松だ。金田監督も「気力を振り絞って投げていた」と称える。試合の後、村松は体調を悪くしてすぐには取材ができなかった。しばらくして取材に応じ、「関一が相手ということで、ビデオとかみて研究しました。9回は自分の弱いところが出ました。最後はきつかったです」と語った。9回を投げ切った村松の投球数は137。そのうちの63球は、7、8、9回の3イニングに投げたものだ。それだけ帝京の追い上げも厳しかった。帝京も関東第一もライバル同士。ともに勝とうという意識は強く持っていたが、夏に負けた分、帝京の気持ちの強さが上回っていた。