<秋季近畿地区高等学校野球大会:大阪学院大 1-0 北稜>21日◇1回戦◇ほっともっとフィールド神戸

 近畿大会初出場の北稜(京都3位)が健闘。敗れはしたが、大阪学院大(大阪3位)に0対1と接戦を演じた。

 北稜は京都市左京区岩倉に所在する公立校。06年のM-1王者となったチュートリアルの徳井義実と福田充徳、ミキの昴生と亜生、おいでやす小田とM-1のファイナリストとなった著名なお笑い芸人を輩出している。

 野球部はこれまでに甲子園出場はなく、府大会8強が過去最高成績。それが今秋は快進撃を見せて、府大会3位で近畿大会初出場を果たした。

 いわゆる普通の公立校の快挙に地元の反響は大きかったという。中西 俊介監督によると、近所のスーパーや老人ホームなどから多数のビデオメッセージが届き、この日の朝は多数の生徒に見送られながら学校を出発したそうだ。

「岩倉の地域を元気にできたことは感謝したいです。本当に良い環境でさせてもらっているなと思いますね」と中西監督は喜びを噛みしめていた。

 北稜が大事にしてきたことはメリハリ。練習は厳しく、試合は明るくをモットーに取り組んできた。

 初めての大舞台でも選手たちはいつもと変わらず明るかった。好プレーが出ると「想定外!」、ヒットを打たれても「想定内!」とベンチの選手が声を出して、グラウンドの選手を鼓舞。「1試合を通じて自分たちは『明るくやり切る』と言っていたので、それができたことは良かったと思います」と控えの主将・山中 嵩斗(2年)は話した。

 好ゲームを演出したのは先発の中村 勇翔(1年)。115キロ前後のストレートとチームメイトから「低反発ボール」と命名された100キロ台のチェンジアップを駆使する左腕だ。

「緊張しましたが、初回からテンポ良く自分のピッチングができたので良かったです」とこの日もチェンジアップを上手く打たせてフライアウトを連発。7回までスコアボードに0を並べ続けた。

 しかし、打線が援護することができない。5回裏には一死一、三塁のチャンスを作ったが、1番・田川 翔己(2年)が4-6-3の併殺に倒れて無得点。0対0のまま試合は終盤にもつれた。

 8回表、北稜は二死一、三塁のピンチを招くと、5番・一柳 颯馬(1年)に左前適時打を打たれて先制点を許す。「打たれたのは外角のカーブ。泳いでレフトフライになってくれたら良いなと思って投げましたが、ちょっと高さが甘く入ってしまいました」と中村は痛恨の一球を悔やんだ。

 打線は最後まで大阪学院大の下條 晃大(2年)を打ち崩せずに5安打完封負け。中村は10安打を浴びながらも1失点と粘ったが、勝利にはつながらなかった。

 惜しくも初勝利とはならなかったが、力は出し切った。「しっかり守りました。負けは完全に僕の責任」と中西監督は選手をかばった。

 この経験は大きな財産となる。「これからの北稜野球部の良い通過点にしたいと思います」と中西監督は先を見据えていた。

 勝利した大阪学院大は29年ぶりのセンバツ出場に一歩前進。準々決勝では東洋大姫路(兵庫1位)と対戦する。春の府大会で大阪桐蔭を下して話題になった注目校がこの秋も旋風を巻き起こすか。