今年のドラフト1位候補に上がる左腕・金丸 夢斗投手(関西大)。1月6日の練習始動日には、多数のメディアが取材し、2球団のスカウトが挨拶も兼ねて、視察したという。
金丸は神港橘時代に最速142キロ左腕として注目され、最後の夏は独自大会(2020年)でベスト8入り。5回戦の甲南戦では17奪三振を記録した。
21年4月、関西大入学後も順調に成長を魅せ、最速153キロの速球、多彩な変化球を織り交ぜる投球で、ここまでリーグ通算19勝、242奪三振、防御率1.07の圧倒的な成績を残している。特に奪三振率は11.73、K/BB9.68と、投球回を上回る奪三振ペースを出しながらも、四球を出さない投手なのだ。その金丸の投球を詳しく紹介したい。
まず注目なのはストレート。常時145キロ〜150キロ(最速153キロ)を計測し、回転数が高く、次々と三振を奪う。金丸が意識しているのは、力感なく投げること。昨年12月の大学日本代表候補の強化合宿で一緒にキャッチボールした富士大の左腕・佐藤 柳之介投手(東陵)は伸びのある軌道に驚き、目標にもなったようだ。
そのストレートは両サイドに投げ分けるだけではなく、高めのストレートでも三振を奪うことができる。
変化球はスライダー、カーブ、チェンジアップの3球種が基本。スライダーは膝下に鋭く落ちて、決め球の1つになっている。
カーブもカウントが取れるだけではなく、球速が110キロキロ台とストレートと比べても球速差があるため、目先を変えたり、ストレートをより速く見せられる有効的な球種となっている。
チェンジアップも手元で大きく沈み、空振りを奪うことができる。
緩急を上手く使った投球だけではなく、横の変化も使えて、高めのストレートと膝下の変化球もしっかりと投げ込み、高低も使えてスキがないのだ。気になったのは、疲労の影響で、伸びのないストレートが真ん中に集まって、痛打されると飛ばされやすい球質だということ。体調が万全ならば、心配はないが、あとは自分の能力を維持できる基礎体力の向上が鍵だといえる。
リーグ戦の成績を見ると、文句なし。あとは全国の舞台でどれだけ実績を残せるか。大学日本代表入りは確実で、そこで実績を残せば、ドラフト1位指名で競合される存在になるのは間違いない。昨年、3球団競合となった西武1位の武内 夏暉投手(八幡南-國學院大)と比較しても、投球の引き出しは豊富だ。
金丸の心配な点は投球過多である。
この1年、全国大会出場、大学日本代表に選出されることになれば、投球回数は間違いなく増える。実際、肘の損傷があった中日1位の草加 勝投手(亜細亜大)はリーグ戦や大学日本代表での登板を合わせて、年間通して、142回を投げている。投げすぎによる怪我の因果関係は分からないが、気になるデータである。
そうなれば、投球過多による故障も頭に入れなければならない。ケアはもちろんだが、関西大の首脳陣も投手運用を気にしてほしい。
怪我することなく、この1年間、凄い投球を披露し、今秋ドラフトの主役として盛り上げることを期待したい。
金丸 夢斗(かねまる・ゆめと)
177センチ77キロ
神港橘時代
1年秋からベンチ入り
2年夏は主にリリーフ投手として活躍し、4回戦進出
2年秋は滝川二、神戸弘陵に敗れ、地区予選敗退。
3年夏は独自大会 5回戦進出
21年関西大入学
1年秋からリーグ戦登板
2年秋に明治神宮大会に出場。2試合登板
リーグ通算成績 19勝2敗 185.2回 242奪三振 防御率1.07