環太平洋大が勝ち点5の完全優勝で2季ぶり14度目の中国六大学リーグ優勝を果たした。

 優勝を決めた周南公立大との初戦に先発したのは、德山 一翔投手(4年=鳴門渦潮)。昨秋の明治神宮大会で最速153キロをマークし、一躍大卒ドラフト上位候補となったが、今春のリーグ戦で登板することができず、チームも中国地区大学野球1部での6季連続優勝を逃す3位に終わる悔しさを味わった。

 それでも、集大成となる秋季リーグ戦でチームは第4週までに8勝2敗で勝ち点4を奪取。德山もここまで全て第1戦に先発して5勝1敗とエースに相応しい投球を示していた。この日は複数球団の部長級を含む6球団14名のNPBスカウト陣が熱視線を送る中、「ストライク先行で打たせて取ることを意識しながら」7回92球3安打3奪三振3四死球無失点の好投。内容もさることながら、目を引いたのは「春に怒り、夏に注意しながら」二人三脚で野村 昭彦監督と取り組んできた細部の部分であった。

 配球面では昨年までほとんどなかった110キロ後半のカーブを使って「高めのストレートで詰まらせる」術を多用すると、4回裏一死満塁のピンチではスクイズを本塁へのグラブトスで阻止。続く二死一・三塁もこの日最速となる148キロのストレートで遊ゴロに打ち取って主導権を渡さなかった。

 このクレバーな投球内容に中四国担当のスカウト陣からも「出力は抑えているが、ボールが強いので、差し込めている」「秋季開幕時よりいい形になっているし、NPBの球場のような固いマウンドならもっと出力も出ると思う」と高評価が続々。一時はドラフト指名も危ぶまれる状況だった德山ではあるが、この上昇カーブを見る限り上位指名へのハードルはクリアしたと言ってよいだろう。

 翌日の第2戦で德山をベンチ待機させたまま、周南公立大を7回コールド8対0で下し、大黒柱となった左腕も今季7試合登板し6勝1敗。43回・659球を投げ被安打31・40奪三振・10四死球・防御率1.67で自身初のリーグ最高殊勲選手賞を獲得している。

 この後は目標として掲げる「大学日本一」への大きな関門となる明治神宮大会出場をかけた中四国3連盟代表決定戦の準備を進めつつ、24日に迫ったドラフト会議で名前が呼び上げられる瞬間を「ワクワクしながら」待つ。

 鳴門渦潮での3番手格から「最も尊敬する人」と話す殖栗 正登氏から学んだインディゴコンディショニングハウスで投球原理を学び、環太平洋大での4年間、野村監督との3年間でエースとしての振る舞いを学んだ。故郷・徳島県海陽町に広がる大海のごとき、NPBという大海原に漕ぎだす。