V9時代の中心選手からの学びを糧に

チームとして勝利を目指しているのはもちろんだが、選手主体のチーム運営からも、伊東監督が野球を通じて何かを伝えようとしている意図は見えてくる。

そこには大学時代、そして社会人時代の経験が大きく関わっているという。

「大学3年生から2年間、ジャイアンツアカデミーでアルバイトをやって、そのあとも、球団職員で働いていました。
特にアカデミーの時は少年野球に対して指導していましたけど、着こなし1つにしてもすごく見られていました。またV9時代の正ショートだった河埜和正さんがコーチにいたので話をする機会がありましたけど、『プロとして、そしてジャイアンツが教えるんだから、本当に正しいことを教えないといけない』ってプロの意識の高さ、厳しさは学びました。
でも、野球は教育的なスポーツだと思いますし、高校野球はミスが許される。なので、チャレンジはOKですし、そこから何かを学んでいく立場にいると思うんです。加えて開智未来は新設校なので、余計やりやすいと思うので、野球を通じて何かを学んでもらえるようにしています」

銭谷主将も、伊東監督の話すチャレンジの良さを感じており、「新しいことをすぐに取り入れることができるのは、創部8年の良さだと思います」と話し、伝統がないからこそ、型にとらわれずに、その時に合ったベストな形でチームを作れているという。

そんな今年のチーム、新人戦で鷲宮などに勝利を飾り、東部地区予選ではシード校として迎えた。初戦・叡明に敗れて県大会とはならなかったが、夏に続き確実に成長した。エースの新妻慎太郎投手は、「チーム全体で大会を勝ち上がる強い気持ちでしたし、初戦も最初から調子が良かったので、『行けるんじゃないか』と思っていた」と手ごたえがあった。

銭谷主将も、「1年生を頼る形になりましたが、全員がまとまって戦えたので、行けそうな予感はあった」と期待感はあった。それでも県大会には届かなかった。

春以降の巻き返しへ、「レギュラー以外の底上げ、競争をできるような冬場にしたい」と話したうえで、最上級生としての覚悟を示した。
「2年生がこの冬場、本気で成長したいと思って練習して、1年生の気持ちを引き立たせられるように、練習を取り組んでいけたらと思います」

創部8年でまだ歴史はない。実績もまだ目立ったものはない。でも、「自分たちで歴史を作っていける」と銭谷主将、そして「チームの一員として歴史を作れることへのワクワクがあった」と藤本が話すように、自分たちで歴史・伝統を作れる楽しさある。と同時に、野球を通じて様々な学びを与える伊東監督の指導が開智未来にはある。

これからどんなチームに成長するのか。今後の歩みを楽しみに見守っていきたい。

開智未来・野球部訪問①:ジャイアンツ球団職員→バックパッカーを経て監督へ?! 埼玉に現れた創部8年目の新鋭校に躍進の予感
開智未来・野球部訪問②:まさか日大三のコーチに?!創部8年目の埼玉の新鋭校の指揮官が学んだ、U-18代表監督の選手育成メソッド
開智未来・野球部訪問③:ジャイアンツV9時代の名選手から教わった「プロの意識の高さ、厳しさ」を糧に!創部8年目の埼玉の新鋭校がチャレンジ精神で新たな歴史を作る