<秋季埼玉県高等学校野球大会東部地区予選:叡明3-0開智未来>6日◇1回戦◇越谷市民球場
来年、埼玉の台風の目になりそうなのが、加須市に所在する開智未来だ。2017年に創部されたばかりの私立校である。
エースの新妻 慎太郎以外、スタメン8人が1年生。この布陣ながら地区予選前の新人戦で東部地区ベスト4へ進出し秋の地区シードを獲得している。
迎えた秋の初戦では夏ベスト16の叡明と対戦。惜しくも0対3で完封負けを喫したが、今後も活躍が期待できる試合内容だった。
初回に3点先制されたが、先発の新妻は5回を投げて、被安打3、3失点の力投。6回から1年生右腕・寺内 斗冴がマウンドへ。寺内は技巧派のエース・新妻と対照的に伸びのある直球が武器。
8回は三者三振に切って取るなど無失点で切り抜けるなど無失点の好リリーフを見せた。開智未来は2年生部員が僅か3人。残り19人は1年生であり、スタメンもほぼ全員が1年生の若いチームだ。この日は特に初回緊張からか若さが出たが、守備のポジショニングなどはしっかりしておりポテンシャルは秘めている。率いる伊東 悠太監督は1年生部員が多くなった背景を語る。
「昨年までは毎年7、8人来てくれればありがたいという状況であったが、今、学校として力を入れていこうとし始めている所で、今年は強豪シニア、ボーイズのある程度動ける1年生が強豪校を倒してチームの立ち上げとして強くしようという高いモチベーションで仲間を連れて来てくれた。偏差値の高い子達なので少し言ったらすぐ理解してくれるので凄くやりやすい。ただしあくまで3人の2年生に良い形で終わらせたいので、今後は2年生が全員スタメンに入れるよう彼らの奮起を促したい」
この試合でリリーフした寺内は栃木の強豪・小山ボーイズ出身と、県外の選手が選ぶようになっている。これは学校から野球部と吹奏楽部が強化指定対象となったことが大きい。難関私学大の合格者を出す進学校であるが、徐々に学力も力量も高い選手が集まりつつある。そこは伊東 悠太監督の経歴も影響しているのかもしれない。
「東海大学で野球は途中で挫折したんですが、そこでスポーツ心理学を学び卒業後、その知識を活かし読売巨人軍のジャイアンツアカデミーのコーチとして実技とメンタル面の指導をメインに2年ほど働きました。辞めてバックパッカーになり、帰国後、U-17日本代表のコーチに就任したり。その後神奈川の定時制の高校に勤務後、どうしても野球部のない所で一から作りたくて、新しく野球部を作るという話を聞きつけ開智未来に就任し、草むしりなどグラウンドを作る所から始めて今8年目です」
巨人での勤務経験などユニークな経歴の伊東監督の人脈もあり、既に練習試合も報徳学園や日大鶴ケ丘、前橋育英、東海大翔洋など強豪校とマッチメイクできる状況にあるだけに、春以降更なる強化がされるようであればいよいよ他校もマークする存在になるのではなかろうか。そんな予感をさせるこの日の一戦であった。