10時間近くの猛練習で手にした粘り強さも携えて、「本気で思って」甲子園を狙う!

ただ、選手たちに話を聞いていくと、どうも走塁強化だけが、強豪私学からの勝利に繋がっているわけではないようだ。

「先輩たちと一緒にやっていた時は、投手中心に試合を展開できていれば、強豪私学とも戦えていた手ごたえはありました。でもスタンドの声援など周りの環境に影響されて、投手陣が崩れると、苦しい試合になりがちでした。
でも今年は野手陣が全員でカバーし合える守備、チーム力が上がりましたし、何より試合の中で粘り強さが出てきた。これが強豪私学相手にも十分通じていると思います」(中嶌投手)

中嶌投手が話す粘り強さ。これが佐野監督はじめ、多くの選手たちが口を揃えて語ったキーワードである。

というのも夏休み、青洲はとにかく練習量を積んだ。朝9時から練習を始めると、昼食やテレビでの甲子園観戦などもしながら、夕方も練習をして陽が沈んでから練習をする日々を送ったという。

もちろん、数日間のオフであったり、練習試合などもあったりしたが、練習は1日あたり10時間。「休憩を挟んだので、集中力を入れ直すことを学びましたし、忍耐力ややり切る力は身につきました」と松野内野手は話す。

山土井主将も「スイッチを入れ直す難しさはあった」と夏休みの練習を振り返るが、粘り強さが出てきたことについて、「夏休みの練習を通じて、最後までやり切る気持ちの部分が、試合でも発揮されて勝つことに繋がっていると思います」と話す。

近年では練習効率化で、短時間で練習をまとめるチームも増えてきた。そういった時代背景を考えると、青洲の夏休みの過ごし方は真逆だったかもしれない。しかし粘り強さを手にするなど、決して無駄ではなかった。交流戦とはいえ、東海大甲府に勝利するなど結果も残し、強豪私学の包囲網を抜けつつある。だからこそ、佐野監督の中でも思いがある。

「これまでの先輩たちが堂々とした試合をやってくれたのを、現役選手たちは間近で見ていますから、強豪私学に対して『あと一息、あと一歩』って感じていると思います。だから今回の勝利は差が縮まったって自信になったと思うんですけど、差を縮めるというよりも追い抜く、追い越すって本気で思って練習をしたいです。だって本気で思わないと叶いませんから」

堅実な野球に走力、そして粘り強さで本気になって青洲は再び聖地を目指していく。