11月も深まり、神宮大会など秋に予定されていた大会も終了。多くのチームがシーズンオフに向かっている。秋季大会の収穫と課題をもとに、春以降に向けて技術、そして土台となる体力強化に力を注ぐ。ただ、練習法はチームによって様々だろう。
SNSの発達に伴って、誰もがいつでも手軽に情報発信。と同時に簡単に調べられるようになった。日々多くの情報が飛び交う情報化社会だからこそ、取捨選択する必要が生まれた。チーム事情、選手差があることを考えても、練習法が異なるのは至極当然のこと。しかし抑えるべき、原理・原則は大きく変わらない。
そこで今回は、多くのチームにアスリートテスト、通称ゼット測定で現場に回り、トレーニング法を指導するゼットの北野裕大さんに取材。トレーニングの原理・原則となるポイント、さらにはお勧めのトレーニング法を解説してもらった。
「本当に難しい」専門家が解説する、奥深いトレーニングの世界
まず基本中の基本の部分だが、筋肉はトレーニングによって筋繊維が傷つき、そこに栄養や休養を入れて回復することによって大きくなるという仕組みだ。だからまず、筋繊維をトレーニングなどで傷つけるわけだが、その方法が「目的によって変わるので、本当に難しい」と北野さんは苦笑いを浮かべる。
「例えば、腕立て伏せ20回が限界の人に、普通に20回を数セットやらせても、それは筋持久力になってしまうので、筋力アップには効果が薄い。それなら10回を全速力でやってパワーとスピードを使ってあげないといけない。
そういうふうに動かすスピードだけでも目的が変わりますし、セット数やセット間の休憩をどうするか。使う器具、もっといえばマシンか、フリーか。それとも自重トレーニングなのか、そこのチョイスの部分は凄く難しいんですよ」
だから、実際に北野さんが現場に行く際、選手たちにトレーニングに関する質問をすると、「重さや回数、セット数は改善出来るチームが多い」と専門家の立場から見て、追い込みが甘い。目的が間違ってしまっているというチームが多いそうだ。
また、北野さんが「難しいところですね」というのが、休養である。
「科学的にはトレーニングをしてから48時間~72時間を空けた方が良いと言われています。
そもそも筋肉は、遅筋と速筋の2種類が存在します。遅筋はふくらはぎや腹筋など、どの動作をする際にも常に使う筋肉です。繊維が多くなっているので、早く回復する。およそ24時間を目安に回復するとされています。一方で速筋は大胸筋や背筋など大きい筋肉。その分、回復も時間がかかる。大体72時間かかるとされています。
ですけど、しっかりと回復させないままトレーニングすると、体力は落ちます。通常のコンディションから筋繊維を傷つけているのに、元に戻る前にやってしまうので、またコンディションが下がる。それを繰り返すと、いつまでもコンディションが戻らない。結果、体力低下、ケガのリスクも高まります」
また、トレーニングと切っても切り離せないのが、筋肉痛の存在だろう。追い込めば、ほぼ間違いなく翌日から筋肉痛に襲われる。これも一種の「トレーニングの効果がある程度あったのではないか」と判断出来ると北野さんは解説。ただ、あまり信用してもいけないと注意を促す。
「皆さんが認識しているような、2、3日経ってから痛みが生じる筋肉痛。そして本当に筋肉が損傷して痛みが出ている筋肉痛と、大きく2つあります。
ただ、この分野は医学的な根拠ではっきりしていない部分が多い。おそらく、筋繊維が傷ついた時の痛みを感じる物質が発生することが、原因であると仮説はあるんですけど、明確にはわかっていないんです。
だから、ある程度の効果があったと判断が出来ますけど、どれくらいなのか判断は出来ない。逆に筋肉痛が残るからトレーニングを辞めた方が良いとも言い切れないんです」
あくまでも24時間、最大72時間の休養を取れれば、ある程度筋肉は回復。再びトレーニングを実施しても大丈夫、というのが現時点では科学的に証明されている。だから北野さんは、筋肉痛に対して、あまり敏感になりすぎるのも良くないと説明するのだ。