加盟校数178校が加盟する大阪府。夏の大会になれば、全国でも有数の激戦区として数えられる地域だ。そこを勝ち抜くとなると、1回戦から登場すれば8連勝が甲子園出場には求められる。それだけに体づくりが勝敗のカギを握る。ゆえにフィジカル強化が充実している強豪私学が上位を占めることが多い。

とはいえ、夏の大阪大会では大塚がベスト16に勝ち残るなど、あと一歩まで迫っている。新基準バットの導入も相まって、公立校のチャンスが高まっている。そんな中、堺市内に校舎を構える堺西も、大塚のように公立校から甲子園を目指している。

堺西・野球部訪問①:「もう無理やな」から一転!仙台育英、大阪桐蔭らを下して日本一となった元甲子園球児が大阪の公立校で目指す野球
堺西・野球部訪問②:たった1年半で球速20キロアップ!香川の私立→大阪の公立へやってきた凄腕コーチが授けるメソッド

甲子園を知る指導者が大阪の公立校に!

他部活と共用するグラウンド、さらに19時頃までという練習時間に制限がある。公立校らしい一面を持つものの、2学年で31人という規模の堺西。加えて、常葉菊川時代に日本一を経験した樋口政宏監督が、2018年から就任している。
高校野球3年間で「走ることにスランプはない」と学んだ走塁を堺西でも指導。着実に力を付け始めているなかで、「新基準バットになって、より一層守備を大事にしている」ということで、近年は守備力強化にも余念がない。

その野球を実現するために、一役買っているのが部長である中野宏俊先生である。
2020年に堺西に赴任したが、それまでは香川の実力校・寒川でコーチして尽力。2015年にはチームの甲子園出場に貢献した指導者である。

選手個人で見ても、加茂優太投手をはじめ様々な選手を育てた。経験ある中野先生だからこそ、全国で学んだことがあったという。

「甲子園に出場するようなチーム、監督の方々と話をする機会をもらって、そこで球数に関してよく話をしていました。そのなかで、1イニング12球を目安にするのを教えてもらったんですよね。打者1人に4球程度を目安にしてストライク先行のピッチング。それでとにかく試合を作れるようにピッチャーを育てるようにしています」

全国を知ったからこそ、勝てる投手の条件を中野先生なりに見出した。ゆえに、投手育成も明確だ。

「4スタンス理論、さらに鴻江理論の2つを生かして、8タイプに投手を分類して、そこにあったフォームや練習法を伝えることで、球速やコントロールを向上できるようにしています。だから球速、回転数、回転軸を定期的に確認。成長具合を見てあげて、練習メニューやフォームの見直しを繰り返しながら、指導をするようにしています」