公立でも私立に勝てる野球を!

現在のエース・松本大器投手(2年)は、まさに中野先生の指導のおかげで、堺西で成長を遂げている投手の1人。入学当初は最速115キロだったストレートも、現在は135キロまで上昇。20キロもスピードアップしている。

「松本の場合は、4スタンス理論ではB1タイプ。鴻江理論はうで体にあてはまっていたので、遠投などをしながら背中側を上手く使って体の入れ替えで投げる。同時にウエイトトレーニングも大事にしながら、連動性を上げていけるように練習をするようにさせました」

実際、現在は体重67キロということだが、1年生の冬から9キロ増量しているという。ウエイトトレーニングの成果も、球速向上の一因になっている。ただ、ウエイトトレーニングばかりをやりこんでいるわけではなく、堺西は加圧トレーニングも活用するなど、あらゆるトレーニングをバランスよく取り組んでいるという。

加圧トレーニングは、表面上の静脈に適切な圧をかけることで血流を制限。その状態で動くことでエネルギーを消費。乳酸が溜りだすことで、成長ホルモンを分泌させて、体づくりを促進するという仕組みということで、「低負荷でケガの防止をしながらも、しっかりと筋肉を付けることが出来る」と寒川時代から取り組んできたそうだ。

取材日も松本はゼットのKAATSウエアを使って加圧トレーニングに取り組んでいた。「加圧の状態で動くので、筋肉が太くなるのを感じるんですけど、外したらもっと大きくなるのを感じる」と話す。効果はかなり大きいようだが、「使っていたらきついです」と相応の厳しさはある。それでも自身の成長に繋がっていることに楽しさを感じながら、取り組めているという。

丁寧かつ計画的な指導。あらゆる練習法を駆使しながら育成する。取り組む投手たちは大変だろうが、中野先生いわく「自信と達成感を与えてあげられるように、わかりやすく、タイミングよく声掛けすることを心がけている」という。

「技術、体力だけではなく、気持ちの部分で『公立だから、私立には勝てない』ということを強く感じています。だからこそ技術、体力を伸ばしてあげて自信を持たせたい。私学と戦っていける、という気持ちにしてあげたいんです」

エース・松本は、「(強豪私学のような)自分たちより格上のチームとやる方が、気持ちは乗ってくる」とどこかワクワクしているようにも見えた。まさに中野先生が思い描くような、自信に満ちた眼をしていた。

そのうえで、「ストライク先行でしたけど、長いイニングを投げられる状況ではなかった」と秋の大会を反省。春以降は、「背番号1を付けて自分が先発のマウンドに上がり、強豪私学相手に恐れることなく投げ勝ちたい」と堂々と宣言した。

「公立が私立に勝つために」と言うことで、樋口監督は守備の重要性を感じている。そうすると、投手がやはり鍵を握ることは間違いない。であれば、中野先生の役割は今後も大きくなるだろう。

樋口監督同様、全国の舞台を知る堺西のもう1人のキーマン、中野先生がどんな投手陣を揃えるか。今後の堺西の活躍を楽しみにしたい。

堺西・野球部訪問①:「もう無理やな」から一転!仙台育英、大阪桐蔭らを下して日本一となった元甲子園球児が大阪の公立校で目指す野球
堺西・野球部訪問②:たった1年半で球速20キロアップ!香川の私立→大阪の公立へやってきた凄腕コーチが授けるメソッド