14日、ZOZOマリンスタジアムでプロ野球12球団合同トライアウトが行われた。今年は45名中、32投手が参加する投手主体のトライアウトだった。そのため、1投手、打者2人しか機会が与えられなかった。

 ドラフトが終わり、支配下登録上限の70名に迫っている球団も多い。そしてFA交渉もスタートしている。また、優れた成績を残しながら戦力外になった選手たちは、このトライアウトにあまり参加していない。不参加者ですでに獲得調査の報道が出ている選手も多い。

 そのため、トライアウト参加投手のチャンスは限りなく少ない。今年は145キロ以上の投手が13名と、出力が高い投手は多かったが、総合力の面で物足りなさがあった。

 その中でも獲得候補に入れると思った3投手を紹介したい。

 今年の参加投手で最もインパクトを残したのは楽天の161キロ右腕・清宮 虎多朗投手(八千代松陰)だ。午前の部で最後に登板し、ロッテの菅野 剛士外野手(東海大相模)を最速154キロのストレートで空振り三振に打ち取り、西武の鈴木 将平外野手(静岡)は139キロのフォークを打たれたが、常時150キロ台のストレートを投げ込んでおり、参加投手では一番のスピードボールを投げ込んだ。清宮は「良い調整ができた」と振り返った。今季は二軍で30.1回を投げ、37四球と制球が大きな課題だが、まだ24歳の若手右腕として期待がかかる。

 ソフトバンク・小林 珠維投手(東海大札幌)の投球も光った。トライアウトでは最初に登板し、二者連続の空振り三振。最速147キロは参加投手6位タイだが、空振りを奪った球質の良さは評価する声も多い。小林は「同じ140キロ台でもボールの強さにこだわってきました。回転数は2300ほどです。今日はそれができました」と胸を張る。東海大札幌時代は速球投手として活躍したが、野手として評価され、プロ入り。3年間は野手でプレーし、4年目は二刀流。5年目の今年は投手に専念した。二軍でもわずか2試合登板に終わり、戦力外となった。

「野手としてなかなか活躍できない時、もやっとした感情があった。投手をやらないで引退するよりも、やりきって引退したいと。球団にはわがままをいわせてもらいましたが、この5年間はいろんなことを学ばさせてもらった」と感謝の意を示した。まだ23歳の右腕であり、投球フォーム、ボールの質が良い。まだまだ花開いてほしい投手だと思う。

 午後の部ではヤクルト・尾仲 祐哉投手(高稜)が二者連続三振を奪う快投を見せた。最速146キロだが、尾仲が他の投手と違うのは、追い込んでから決め球があったこと。130キロ中盤の変化球で空振りを奪った。ストライク先行もできて、2ストライクからの投げミスがない。各変化球の精度も非常に高い。150キロ以上の投手や、140キロ後半の速球を投げる投手がいる中、一番実戦的だった。今季は二軍で33試合で防御率1.67と好成績を残していた。NPBの獲得がなくても、社会人野球でバリバリやれそうな予感はする。例として21年のトライアウトに参加した元オリックスの金田 和之投手(都城商)が最速147キロの速球、鋭い変化球を投げ、三者凡退の快投。三菱重工westで2年間プレーしたが、尾仲の投球は当時の金田に負けないものがあった。

 最後に元ロッテ・島 孝明投手(東海大市原望洋)に触れたい。引退から5年のブランクもあったが、参加投手では2位タイとなる最速151キロを計測。結果は四球、右前安打とあまり良くなかったが、150キロをたびたび記録しており、ロッテ時代よりもフォームの動きがよく、投げ込む速球の質は非常に見応えがあった。島は引退後、国学院大に通い、動作解析を極めてきた。「その成果が出たかな」と語る。現在は慶応義塾大の大学院に通うが、このトライアウトを機にプレーヤーとして名前を聞く機会が増えるか、注目だ。

 この1週間、参加投手の獲得報道が現れるのか、注目だ。

■参加投手の球速一覧

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