<鹿児島商業高校創立130周年記念招待高校野球:東洋大姫路9-0鹿児島商>18日◇招待試合◇平和リース球場
鹿児島商業高校創立130周年記念招待高校野球と題して11月18日、鹿児島市の平和リース球場で鹿児島商と東洋大姫路(兵庫)の対戦があった。
両者は38年前の1986年、夏の甲子園の準々決勝と秋の国民体育大会の決勝で対戦し、いずれも鹿児島商が勝利した過去がある。東洋大姫路は春8回、夏12回の甲子園出場を誇り、この秋の兵庫県大会、近畿地区大会を制し、来春のセンバツ出場も有力視されている。鹿児島商は春12回、夏13回の甲子園出場経験がある鹿児島の名門校だが、夏は95年、春は07年以来、甲子園出場から遠ざかっている。学校創立130周年の節目の年にかつて全国の舞台でしのぎを削った名門校を招待し、「古豪復活」(塗木哲哉監督)を目指すきっかけにしたいと両者の対戦が鴨池で実現した。
試合前の始球式では38年前、鹿児島商の甲子園ベスト4と国体優勝を成し遂げた中原耕造さん、濵田健吾さんのバッテリーが始球式をした。平日午後の開催だったが、スタンドには鹿児島商の約550人の全校生徒や野球部保護者、同校OBらが多数見守る中で、盛り上がった。
試合は東洋大姫路が近畿地区覇者の実力を随所に発揮した。
2回表に下位打線で先制機を作り、8番・桒原 大礼(2年)のスクイズで先制する。このところチームで意識している「点をとれるときにとる」(岡田龍生監督)を実践した。
5回までは両者得点はこの1点のみと、投手を中心とした守り合いの展開だった。
絶妙なスクイズで追加点を入れる東洋大姫路
東洋大姫路が底力を発揮したのは6回以降だ。6回表一死一塁、8番・桒原のところでカウント3ボール1ストライクからエンドラン。これが見事に決まって一走・渡邉 裕太(1年)が生還し、追加点を得た。7回はヒット、送りバント悪送球で無死二三塁と好機を広げると、4番・木村 颯太(2年)が犠飛、6番・高畑 知季(2年)がセーフティースクイズとそつなく得点を重ねた。9回には集中打で畳みかけ、5点をダメ押しした。
鹿児島商は左腕エース覺堂 駿也(2年)が丁寧に緩急を使って、7回まで4失点と粘りの投球を続けていた。打線は8安打したが適時打が出ず、本塁が踏めなかった。
古豪復活を目指す鹿児島商としては、近畿地区大会を制し、20日から明治神宮大会を控える東洋大姫路との対戦は、この年代の全国レベルを肌で感じ、何を向上させていかなければいけないかを知る絶好の機会だった。
「スキがなかった。古豪復活のための良い経験が詰めた」と塗木哲哉監督。先制点に重きを置き、手堅くスクイズで先制、カウントが悪くなってストライクが欲しいところを見透かしてエンドランで奪った2点目、ミスが出たところでそつなく畳みかけた3、4点目などは全国屈指の強豪ひしめく近畿を制したチームの底力が出ていた。
「体格の違い」は山下 琥太朗(2年)と川原 瑛太(2年)、チームリーダーの2人が共通して感じた差であり、「パワーやミート力、野球IQも高かった」(山下)「打撃の基礎力がついていて1つ1つのプレーの質が高い」(川原)ともそれぞれ感じていた。
試合後、鹿児島商ナインに話をする岡田監督(東洋大姫路)
試合後、岡田監督が鹿児島商ナインの前で話をした。「甲子園に行くためにはどういう練習をすればいいかを考え続けられる集団になろう」と具体的な目標を掲げ、考えて効率よく練習することの大切さを説いていた。
低反発バットの導入で打球が飛ばなくなった今、「バットの能力でボールが飛ばなくなったからこそ、正しい技術を身に着ける」大切さを力説。日頃の打撃や守備練習でも、実戦の状況を想定したり、具体的な課題をチームで掲げて取り組むことなどを語っていた。
「近畿優勝のチームを相手に向かっていくことができたのは良かった。昔強かった古豪のままで終わるのではなく、本当に勝って甲子園にいけるチームになりたい」と山下。川原は「1人1人の基礎力を高めて、応援してくれる多くの人たちの期待に応えられるようになりたい」と来春、夏以降に向けての飛躍を誓っていた。