阪神タイガースの青柳 晃洋(川崎工科高出身)がポスティングにより、メジャーリーグへの挑戦を表明している。2024年は12試合の登板で2勝3敗、防御率3.69とここ2年は不本意なシーズンを過ごしている。それでも、2022年には最多勝、最高勝率、最優秀防御率の投手3冠に輝くなど、傑出した成績を残した実績を持つ。アンダースロー気味の独特な投球フォームが特徴だが、変則フォームの投手がメジャーリーグに挑戦するのは、青柳が初めてではない。
代表例となるのが、現在東京ヤクルトスワローズの監督を務める高津 臣吾(広島工出身)だ。メジャー移籍の前年は44試合、34セーブ、防御率3.00の成績で最優秀救援投手のタイトルを獲得したが、WHIP(1イニングあたりに許した走者の数)は自己ワーストになるなど、不安定さも目立っていた。そんな中、海を渡り、メジャー初年度の2004年には59試合、6勝4敗19セーブ、防御率2.31の好成績。しかし、翌2005年は防御率5点台と数字を落とし、2006年に日本球界に復帰した。
2011年には建山 義紀(東海大仰星:現東海大大阪仰星出身)がメジャーに移籍した。移籍前年は58試合、防御率1.80とキャリアハイの数字を残していたが、メジャー初年度は39試合の登板で防御率4.50。2年目の2012年は14試合、防御率9.00に終わり、3年目はメジャー登板なく、NPB復帰となった。
近年では、アンダースローで活躍した牧田 和久(静清高出身)が2018年にメジャー移籍。前年の2017年には58試合、防御率2.30の好成績を残したが、メジャー1年目は29試合に登板し、防御率5.40と振るわず。翌2019年はメジャー登板なしに終わった。
高津の1年目を除き、変則投手はメジャーで結果を残せておらず、変則フォームというだけでは通用しないようだ。その理由に平均球速が低いこと、ホームランにつながるフライを多く打たれていることが挙げられる。牧田のメジャー1年目は35イニングで7本塁打を打たれており、100イニングに換算では被本塁打20とかなり多い。リリースの位置が低く、ボールが浮きがってくる軌道になるため、フライを打たれやすいことが被本塁打の多さに繋がっている。
一方、青柳のストレートの平均球速は141.9キロ(2024年)だが、ツーシームなどでバットの芯を外す投球でゴロ率が高く、上述の3投手とはタイプが異なる。近年の成績不振が懸念されるが、パフォーマンスを落としていた高津のように活躍した事例もある。また、高津、建山、牧田はいずれもピークが過ぎた30代半ばでメジャー移籍しており、青柳は現在30歳。厳しい世界だが、活躍の余地はありそうだ。
<変則投手のメジャー前年の成績とメジャー1年目成績>
・高津 臣吾(メジャー移籍時35歳)
メジャー前年 :44試合 2勝3敗34セーブ 防御率3.00
メジャー1年目:59試合 6勝4敗19セーブ 防御率2.31
・建山 義紀 (メジャー移籍時35歳)
メジャー前年 :58試合 1勝2敗25ホールド 防御率1.80
メジャー1年目:39試合 2勝4ホールド 防御率4.50
・牧田 和久 (メジャー移籍時33歳)
メジャー前年 :58試合 3勝3敗28ホールド 防御率2.30
メジャー1年目:27試合 1敗2ホールド 防御率5.40