地域No.1を決める全日本大学9ブロック大会。全九州選抜は大会5連覇がかかっていた全関東選抜に逆転勝利し、甲子園出場を決めた。1点ビハインドで8回を迎えたが、相手バッテリーミスで同点。そして9回にも相手守備のミス、さらに1番・山口 絋輝外野手(西日本短大付出身)の適時打で2点を加えて、甲子園での決勝戦に駒を進めた。
2023年も決勝戦を戦った両チーム。しかも今大会は決勝戦を甲子園で行う。これまで以上に準決勝で勝つ重要性は大きかった。その大一番、全九州選抜は2年生右腕・本多岳投手(大崎出身)を起用した。
最速138キロ。突出して速いストレートを投げられるわけではない。本多本人も「常時140キロを出したい」と強く願っている課題でもある。それでも逸材揃いの全関東選抜を4回途中まで1失点。ピンチを招いたところで降板し、「ゲームを作れなかった」と反省の弁を述べたが、何とか先発の役目を果たしたと言ったところだろう。
しかしチームは勝った。夢舞台・甲子園で投げるチャンスをつかみ取った。大崎時代に味わえなかった晴れ舞台に行けることに「嬉しいです」と一言を本多は残したが、そこには強い思いがあるからだ。
「2年生の春、チームはセンバツ甲子園に出場したんですが、自分はボールボーイでした。そのときは『ベンチで一緒に戦いたい。マウンドで投げたい』と思ってグラウンドにいました。なので、自分たちの代になって甲子園に出場できなかったことは、自分の中で相当引きずりました。だから今回は甲子園に選手として立てることは嬉しいです」
ただ、本多の準硬式人生は順風満帆ではない。大崎は卒業生が準硬式に進んでいく選手が多いこともあり、在学中から準硬式のこと、そして甲子園でプレーできる環境があることもわかっていた。実際に試合も観戦したことがあり、当時から「レベルが高いな」と準硬式の世界は十分理解があった。
だからこそ、高校野球が引退してからも準備をしていた。だが、靭帯を痛めたことで、2年生の夏ごろまでは思うように投げられない状態に。「投げたい」と焦る気持ちがあった。しかし、同級生の支えもあって我慢の日々を乗り越え、夏の全国大会では2試合で先発起用。しかも初戦・甲南大は完封勝利と鮮烈なデビューとなった。
ケガで苦しんだ時期を乗り越え、高校時代に出場できなった夢舞台に立つ本多。しかもまだ2年生。これからの九州地区、もっといえば準硬式の中心になりうる選手だろう。「今までで一番の投球をしたい」と意気込みを語った本多。是非甲子園でベストピッチングを見せ、さらなる自信、そして成長のきっかけをつかんでほしい。