神宮大会で優勝候補に挙がる東洋大姫路が初戦で5回コールド勝ちを収めた。
エース・阪下 漣投手(2年)の安定感が絶大だ。5回44球を投げて完封勝利を上げた。近畿大会でも準々決勝の大阪学院大高戦で90球完封勝利を上げるなど、少ない球数で長いイニングを投げられる優秀なスターターであり、近畿大会では27.1回を投げてわずか1四球。神宮大会初戦も無四球で、コントロールの良さは健在だった。
その投球は完成されている。
最速147キロといわれているが、近畿大会から神宮大会を見ても常時130キロ後半で最速は140キロ前半と、突出した球速はない。しかし、厳しいコースに威力あるストレートを投げ、どのコースにも力のあるボールを投げることができている。いわゆる回転数、回転効率も高いストレートだろう。
ストライクを気にせず、全力で投げれば147キロは出るのだろうが、阪下は1試合通して投げ続けることを考え、球速を少し落として、130キロ後半の速球でコースに集めて打たせて取ることに徹している。試合間隔が短いトーナメントにおいてはとても合理的な投球スタイルといえる。
変化球は120キロ後半のカットボールが生命線。相手打者のタイプに応じて、割合を多めにしたり、初球からどんどん投げたり工夫をしている。ほかではカーブを投げる。今ではフォークなど縦系の変化球を多めに投げる高校生投手もいるなか、ストレート、カットボールを基本としたコンビネーションを使い、少ない球数で抑えることができるのは、ストレートの強さ、コントロールの良さがあるからだ。
この投球ができているのは投球フォームの良さ、指先の感覚が良いことが理由だろう。ゆったりと左足を上げてから、右足に体重を乗せていき、左腕のグラブを高々と掲げながら、振り下ろすオーバーハンド。うまく脱力ができており、力の入れ加減が絶妙で、急に乱れることはない。
来春センバツでも大会屈指の投手になりそうだ。ただ、高卒プロとなると、平均球速、縦変化がないことが物足りない。高卒プロを狙うには、平均球速140キロ中盤を求めていきたい。今年、プロ入りした高校生右腕は先発でもこの数字を出していた。
阪下は190センチ以上の高身長右腕のように角度、将来性で勝負する投手ではないので、今後さらなる完成度の高さを求めていきたい。今年、DeNAのドラフト1位になった竹田祐投手の履正社時代を思い出す投手だ。竹田も、高校卒業後、7年かけてドラ1となった。阪下もしっかりと時間をかければ、そのレベルになる投手だろう。いずれにしても、プロを狙える投手として追いかけていきたい。
<阪下 漣(さかした・れん>
右投げ右打ち 183センチ86キロ
西宮ボーイズ出身
東洋大姫路では1年春からベンチ入り
今年の近畿大会では27.2回を投げて、わずか1失点、1四球の快投。