『千葉に怪物出現!』『ドカベン?』
『千葉に怪物出現!』『ドカベン?』――――。
この春、SNSを騒がせた高校球児がいる。千葉・行徳の水竹 颯内野手(3年)だ。
身長184センチ、体重は139キロ。大相撲の霧島(186センチ・141キロ)とほぼ同サイズの野球選手である。
水竹が話題を呼んだのは、今春の県大会1回戦・四街道戦のこと。この試合で水竹は2打席連続本塁打を放ったのだが、その本塁打が驚くほど豪快だったのだ。軽々とバットを振ると、美しくも鋭い打球がレフトスタンドに吸い込まれていったのである。この映像はたちまちSNSで拡散され、一気に“水竹ファン”が現れることとなった。
彼はこの盛り上がりをどう感じているのか。そして最後の夏をどう迎えようとしているのか。
取材中も「お腹が空いた」
「話題になったのは、素直に嬉しかったです。ここまで注目されるのかという驚きもありましたし、最初はプレッシャーを感じました」
水竹は語る。
行徳の練習場に足を運ぶと、すぐに水竹の姿は目についた。二回りは小さい同級生たちとグラウンド整備を行っていた。
現在の139キロは7キロのダイエットの成果だという。以前は大好物の「サーモンの握り」を42皿平らげるなどしていたが、最近は朝6時半からランニングを行うなどして夏に向けて体を絞ってきたという。
「目標として、130キロまでは減らしたいですけど…厳しいですね。やっぱり食べちゃうので(笑)。いま朝はどんぶり2杯、夜は3杯、昼の弁当はお米2合くらいですけど、足りなくて…(笑)。でも学校の購買部で食べ物を買うのは我慢しています!」
人懐っこい笑顔で話す水竹。
「正直、いまもお腹空いています……」
なんとも明るいキャラクターである。
他の選手とは飛距離が違った
水竹が野球を始めたのは小学校3年生の頃。地元の軟式チーム「ホワイトイーグルス」が人手不足となり、助っ人として参加したのがきっかけだ。
浦安中学入学時には既に168センチ、104キロまで成長。「動かないと痩せない」と運動部入部を模索する中、家族からは柔道などほかの競技も進められたが、“野球愛”は変わらなかった。「ほかの選手とは打球の飛距離も違った」(水竹)という長打力を武器に“代打の切り札”として活躍していたという。
高校は中学から徒歩で20分もしない行徳に進学。2年間見守った吉田 晃監督は、彼の成長に目を細める。
「高校2年の春から段々と伸びてきました。飛ばないと言われる新基準のバットも関係なく飛ばしています」
水竹自身も行徳で過ごした2年半、たしかな成長を感じている。
「圧倒的にバットにボールが当たるようになりました。体の内側からスイングをするインサイドアウトの練習を中学時代からしてきましたが、高校に入って『バットのエンドグリップをボール向けて打つこと』、『45度にバットを振ること』を教わってさらによくなりました」
水竹の高校通算本塁打は11本だが、今年に入ってからが6本。急成長がうかがえる。冒頭で記した春季大会の本塁打も、インコース高めに浮いた球をコンパクトに仕留めたもの。日頃の練習の成果が出た活躍だった。