21日に甲子園を使って決勝戦が開催された第42回全日本大学9ブロック対抗準硬式野球大会(以下、9ブロック大会)。甲子園の地元・全関西選抜は決勝戦まで勝ち上がったが、全九州選抜の前に3対5で敗れ、優勝とはならなかった。

「最後の打席、『死ぬ気で出塁しよう』と思いましたけど、振り負けた感じです」

3対5で迎えた9回、2点差を追いかけて打席に入った主将・前原 隼人捕手(岡山理大付出身)。サヨナラ勝ちへ、出塁して後続に繋ぎたかったが、全九州選抜の田中翔投手(東福岡出身)の前に、快音を響かせることが出来なかった。

前原はこの試合ベンチからスタート。拮抗した投手戦に「何かを変えないと点数が動かない」と思い、出場する瞬間を心待ちにしていた。が、6回からいざマスクを被るも、8回に集中打を許して5失点。「もう少し低めに投げてもらえるように伝えればよかった」と後悔していた。

ただ、決勝の舞台として用意された甲子園に立てたことは「本当に幸せでした」と話す。その表情には笑みすらこぼれていた。

というのも、前原の地元は大阪で阪神ファン。だから甲子園には来たことがあったものの、観戦はスタンドからだった。そんな憧れの舞台だったからこそ、「下からグラウンドに上がる景色なんて、『プロ野球選手になれた』ような気分でした」と興奮気味だった。

けど、岡山理大付時代は、甲子園に対する印象は違う。「限られたチームだけがいける、一番しんどい思いをして努力した1校だけが行ける世界だと思っていました」と選ばれたチームだけが出場できる特別場所。もちろん、岡山理大付時代は目指し続けたが、たどり着くことが出来なかった。

その後は、「立派な社会人になりたかったですし、楽しく野球をやりたかった」ことを理由に、地元・大阪に戻って京都産業大の準硬式野球を選択。大学生活を送っていたなかで、1年生の時に、準硬式からでも甲子園を目指せる環境が整った。それを知った前原は、モチベーションが変わった。

「頑張れば甲子園でもプレーできる。それが準硬式に対する熱量を高めてくれて、練習は一層頑張りました。おかげでチームの成績もよくなりましたね」

そのおかげもあってか、今回の全関西選抜に招集されて、主将にも抜擢された。今大会は決勝戦まで勝ち上がれば甲子園出場というチャンスがあったこともあり、「声を出して引っ張った」と即席チームの一体感を高めた。その結果が今回の決勝進出、準優勝に繋がったのだろう。

現在3年生の前原。4年生の夏まで継続予定ということで、このオフは「チームの話をして、みんなでレベルアップをしたい」と全国大会出場へ、今回の経験をもとに練習に打ち込むつもりだ。

幼い頃から見てきて、高校時代はたどり着けずに諦めかけた夢舞台に立てたことで様々な経験を積んだ前原。これこそが甲子園で準硬式をやる意義だと考える。その瞬間だけの満足感ではなく、次に繋げていける思考、行動力のある学生が揃っているからだ。

是非前原には、「甲子園が自分を成長させてくれた」と思わせるような大活躍を最後の1年で見せて欲しい。