試合は劣勢で、1対1で迎えた6回裏に環太平洋大が3点を勝ち越されます。7回に1点を返し、迎えた8回表。まず小郷選手の適時打で1点を返し、3対4と1点差に迫り、伊藤選手に打席を迎えました。
「この場面で打つのが自分の仕事。小郷が出塁してくれていて、小郷は足がある選手。ストライクを取りに行くと思いました」
初球のストレートを振り抜くと、打った瞬間、伊藤は「手ごたえはありました」と本塁打を確信した伊藤は右手を突き上げ、大きく喜びを表した。この本塁打にスタンドは大きく盛り上がり、一塁側の立正大ベンチは選手全員飛び出し、喜びます。そしてホームインすると、伊藤選手、小郷選手は抱き合って喜んでいました。長い歴史のある神宮大会でも名シーンだと思います。
本塁で抱き合う伊藤と小郷
この2点を守りきり、2度目の優勝を決めました。そして最後、整列に向かう伊藤選手の目は潤んでいました。
「今までずっと苦しい日々だったので、それを思い出しました」
主将としてチームを引っ張っていた伊藤選手でしたが、悩む日々が多かったようです。
「4年生がいなければ、僕はずっとキャプテンはできていませんですし、本当に感しています」
4年生でミスがあればカバーし合う集団を目指しました。また控えの4年生たちにも感謝しました。応援団に入った選手たちはユニークな掛け声でスタンドにいるファンを笑わせるほどで、「スタンドにいる仲間も盛り上げてくれるので、本当に心強いです」と感謝の
気持ちを表していました。
この大会では10打数5安打、2本塁打4打点の活躍で、大会の主役となりました。勝負強い打撃の裏には坂田監督をはじめとした立正大首脳陣のアドバイスがありました。
「伊藤は試合にいるだけで存在感がある。4打席のうち1本は試合を決める一本を打てばいいよといわれまして。今まではチームのことを考えていたんですけど、もちろんチームのことも考えながら、自分がやるべき準備もしっかりと行おうと思いました」
この大学4年間について、「考え方1つで変わる人生だったと思います」と総括しました。伊藤選手はプロ7年間を終えて、通算11本塁打。22年に楽天へ移籍して、出場機会を増やしていますが、来年は一軍定着して、キャリアハイの活躍を見せてほしいと思います。
神宮大会は大学生にとって最後の大会になります。いろんな思いを背負って、大会に臨む選手たちが多く、熱戦を見ると感動します。今年の神宮大会もあと少しとなりました。今年の出場チームはどんなドラマを見せてくれるのか、しっかりと見届けたいと思います。