数多くの強豪校がひしめく西東京。勝ち上がるのは容易ではないなか、存在感が際立ち始めているのが春夏合わせて6度甲子園出場を誇る日大二だ。
秋は都大会で初戦敗退の悔しい結果だったものの、夏は西東京大会ではベスト4進出。現チームの主将・瀧澤和也捕手などが3年生たちと一致団結して勝ち抜いて経験を積んだ。だからこそ、この1年は大きな意味を持つだろう。
甲子園優勝監督から学んだ、選手たちが話しやすい環境
「チームとしては非常にいい。去年よりも組織としては大きく成長しています。役割をしっかりと個々が果たしてくれますし、チーム理念も深く浸透してきました。おごりなどなく、よくなっていました」
チームを指揮する齊藤寛文監督も、今年のチームに対して手ごたえがあった。でも都大会の初戦・雪谷には3対10で敗戦した。「初戦の難しさですね」と齊藤監督は語ったうえで、「この秋はバッテリーを中心としたロースコアをゲームモデルにしていました。しかし、初戦では先に10点を取られてしまい、追いつく攻撃力が(今のチームには)まだありませんでした」と振り返った。ただ一方で、「この負けをどう活かすかで秋の大会に価値が生まれると思います」と前向きにとらえているようだ。
齊藤監督は、日大二を卒業して、大学在学中からコーチとして長く支えてきたが、2023年の春より監督に就任。長くチームを指揮してきた田中吉樹監督に代わって、伝統校・日大二の指揮官となると、いきなり結果を出す。
初めての大会に当たる春季大会こそ初戦で負けたが、夏の大会ではベスト16入り。世代交代した現3年生のチームでは秋と夏にベスト4進出。早くも結果を出したことで一躍注目を浴びた。
瀧澤主将いわく「自分たちに寄り添ってくれるような、かなり距離の近い監督さんです」と話すように、齊藤監督は個々のコミュニケーションを大事にしてきた。そこにチームを強化出来た理由があるようだ。
「田中監督は行動で示す。自分が先頭に立って背中で引っ張る、不言実行タイプでしたので、私はチームのバランスをとるうえでも、選手個々とのコミュニケーションをコーチ時代から大事にしてきました」と背景を語ったうえで、選手との対話を大切にしてきた理由を改めて話す。
「2021年ごろ、前橋育英の荒井直樹監督とつながりのある人がいたので、会わせてもらう機会をもらったんです。そのときの荒井監督の野球に対する姿勢は勉強になりました。
荒井監督は選手に対して、他愛もない話をしている姿があり、自然体でコミュニケーションを取っていたんです。そのおかげなのか、バッティング練習の際に、選手たちが積極的に荒井監督のところに質問へ行くんですよね。
毎日一緒に練習している監督に、選手から逐一何を意識しているなど相談する文化を醸成するのは非常に難しいことなんですけど、日々の些細なコミュニケーションがあるから、選手から本音が出てくる。向こうから報連相をしてくれるから、結果的に技術力も伸びやすく、成長に結びつくと思います。荒井監督との出会いで、より選手個々と些細なコミュニケーションを大事にするようにしました」
2013年に全国制覇を成し遂げ、現在はU-18代表のコーチとしても尽力する荒井監督。高校野球界で有名な指揮官の姿を見て、選手から「報連相が出来やすい環境を整える」ことの重要性を学んだ齊藤監督。だから練習中は限られた時間の中で出来るだけ全選手と対面でのコミュニケーションを取ろうと心がけている。
実際、瀧澤主将は捕手として「最近の投手陣の調子はどうなのか」であったり、「次の試合で先発させようと思っているんだけど」ということで、細かなコミュニケーションを取ることが多いという。