「優勝するくらいの勢いで」 春への逆襲誓う
とはいえ、指揮官として練習全体を見渡す必要もある。もちろん、コーチ陣は数名おり、齊藤監督1人で全ての指導をするわけではない。でも、伝えるべき時は選手個人に対してはもちろん、チーム全体に向けて指導するべき時もある。だから、選手たちにはチームスローガンである「自主創造」を体現することの重要性を強く感じている。
「最初の佐藤(慎平)主将の世代は、『次は何をしますか。次はどうしますか。今日は何をしますか』と全て聞いてきたんですよね。去年の樋口(結)主将の世代は、自ら考え、自ら行動する意識はついたのですが、報連相などの組織で大切な部分は欠如していました。そして、瀧澤の世代になり、秋の大会は初戦で負けてはしまいましたが、組織として大切なことを選手一人ひとりが理解し、チーム文化として浸透してきたことは確かです。
一方でこの秋は、チーム全体への指導に偏ったことで、選手個々への指導が疎かになっていたことも事実です。コーチ時代に大切にしていた、選手一人一人との対話が欠如していました。真の自主創造とは、選手主体でもなく、指導者主体でもなく、その中間にある対話で生み出される無形のものであると、この秋を終えて気づきました」
瀧澤主将も齊藤監督は同意見のようで、ともに戦っていたからこそわかる先輩たちの強さを振り返る。
「先輩たちは我が強かったですし、かなり意見をぶつけ合っていたんですよね。人数は15人でしたが、それくらい1人1人の気持ちが強かった。それでいて、選手個々がしっかりと役割をこなして、全てが上手くはまった。だから結果が出たと思うんです」
1人1人が高校生として自主自立、そのうえでしっかりとプレーで結果を出す。そうしたことの連続が、チームとしての結果に繋がる。だからこそ、選手個人をいかに鍛えられるか。冬場の課題は、そこにあると齊藤監督は考えている。
「組織力なら十分戦えるように整ってきていますが、個の能力を伸ばしていかないと、発揮できるパフォーマンスが増えてこない。だからコーチ陣とのコミュニケーションは密に取り合って、選手の課題や指導したことなどを棚卸しをして、共通認識をもって個々の選手指導にあたっています。
高校生を指導するうえで大切なのは、やはりチーム理念だと思っています。日大二のチーム理念を一言でいうと「幸せと教育」です。理念がチームを結束させて、チームにかかわるすべての人の指針になります。『この野球部でよかった、このメンバーと野球ができてよかった』と心の底から思って卒業してもらうことが一つのゴールです。
人に決められた人生では幸せは感じられません。指示待ちの人には大きな仕事は入ってきませんし、社会に貢献することはできません。チーム理念を成し遂げるためには、チームのスローガンである『自主創造』が必要不可欠になってきます。こういった組織のメンバーは自己有用感が高く、個も伸び、組織としても伸びていくと思います」
瀧澤主将も、「自分がやるべきことをやって、1点ずつ取る。その点数を投手陣を中心に守っていければ勝てると思います」と選手個々がしっかりと結果を出すことで、チームとしての勝利が近づいて来ると考えている。
そのうえで、西東京を勝ち抜くことのポイントに、「勝負強さ、意地というのが出てこないとやっぱり勝てない」と1球に対する執念をもって取り組むことが、春以降の鍵だと考えている。
だからこそ、瀧澤主将は春に対する思いは強い。
「主将として何が出来るかといわれたら、先頭に立って結果を出すこと。そうしなければ顔は立たないですし、周りはついてきません。秋の初戦敗退の悔しさもあるので、春は悔しさをぶつけて、春はベスト4以上の結果、優勝するぐらいの勢いで戦いたいと思います」
齊藤監督が就任したとき、瀧澤主将たちが入学してきた。齊藤監督の1期生というわけだ。3年間指導した成果がどんな形で結実するか。30歳の青年監督、勝負の春、そして夏の戦いは見逃せない。