樟南高校野球部創部70周年記念試合が11月27日、鹿児島市の平和リース球場であった。鹿児島実を相手に、両校とも全校応援で盛り上がる中、熱戦を繰り広げた。

 樟南野球部は1954年創部。これまで春7回、夏20回の甲子園出場回数があり、94年夏には鹿児島勢初の決勝進出を果たすなど、県下屈指の名門校。創部70年周年を記念し、これまで樟南と双璧を成す2強であり、「伝統の一戦」と呼ばれて県内公式戦で幾多の名勝負を繰り広げてきた鹿児島実との対戦が実現した。

 夏の甲子園出場回数はどちらも20回で県内最多タイ。16年夏決勝では、延長15回で決着がつかず、再試合の末、樟南が競り勝つなど記録と記憶に残る名勝負が数々ある。長年、鹿児島の高校野球界を先頭に立ってけん引してきた自他ともに認める「ライバル」同士の対戦であり、平日午前中にも関わらず、両校生徒以外の多くの高校野球ファンがスタンドに駆け付けていた。

 開会式では両校ナインが入場行進。樟南野球部後援樟南会の神山 弘会長が「これまで鹿児島を代表する2強として鹿児島の野球界を引っ張ってきた存在。来年夏は両校で甲子園をかけて決勝戦で対戦できることを期待します」とあいさつ。選手を代表し、樟南政野 宏太主将(2年)が「長年の伝統をもとに、新しい伝統を築いていけるよう、1人でも多くの人に笑顔と感動を与える試合を」と宣誓した。

 始球式では11年前の夏の決勝戦で樟南のエースとして活躍した山下 敦大さんが務めた。この時対戦した鹿児島実は、のちに阪神でプロ野球選手として活躍した故・横田 慎太郎さんがエースで4番だった。「横田君をどう抑えるかをずっと考えて野球をしていた。卒業後も軟式の試合でこのマウンドに立ったけれど、久しぶりに全校応援の雰囲気を味わえて緊張しました」と感想を話していた。

 試合は鹿児島実が3回表に3点を先取。5回裏に樟南が同点に追いつき、7回裏に畳みかけて8対3とし、規定により8回で終了した。


中日指名の井上剣也(鹿児島実)

 7回裏の攻撃では鹿児島実が3年生エースで中日に育成指名された井上 剣也をマウンドに。樟南も代打で3年生の主将だった坂口 優志を代打に送った。「前の晩、剣也に『全球直球で勝負して』と話した」と坂口。井上も「結果はどうであれ、今できる全力のパフォーマンスを見せたかった」と燃えた。全球直球で1球ごとにスタンドが沸き、最速149キロの表示が出た。九州共立大進学予定の坂口も木製バットで果敢に打ちにいくも、なかなか前に打球を飛ばせない。結果は四球で「痛み分け」に終わった。

坂口は「本当に全部直球を投げてくれて嬉しかった。高校の最後にこういう舞台に立てて、大学に進んでプロを目指して新たな気持ちで頑張るきっかけになった」と感想。井上も「高校野球は引退したけれど、こういった形で、マウンドで投げられて良かった。結果が出せずに悔しい思いをしたことをプロの世界でバネにしたい」と決意を新たにしていた。

自身も樟南OBである山之口 和也監督は「こういった形で70周年を祝ってもらえたことが何より幸せ」と感想を語る。親善試合であっても、「お互いに負けたくないと思う強い気持ち」を試合の中で随所に見ることができた。当面はどちらが先に21回目の夏をつかむかを目指して、これからも切磋琢磨していく。

この試合は規定により8回で終了したが「この続きは来年夏の第107回大会の決勝にとっておきましょう」と樟南・原田 博史部長のあいさつで締めくくりとなった。