沖縄県で開催されているJAPAN WINTER LEAGUE 2024。NPBや社会人をはじめ、中国やアメリカなどの外国選手を含めて、約150名の選手が参加している。数多くの選手たちがプレーで自分をアピールする日々が続いているが、そんな選手たちのバットを見ると、あることに気が付く。
グリップエンドに装着されている計測機器と思われる何か。その正体はミズノ株式会社(以下ミズノ)が販売展開する、打撃解析システム・BLASTだった。
高校野球でも、練習で導入するチームが増えているBLAST。専用センサーが、細かい動きを感知することで、バッティングに関する13項目※の数値測定。そのデータはスマホなどの機器と連動させることで、自身のスイングの状態をチェックできる。特にリアルタイムでデータを見られることが、好評であるという。
※バットスピード、アッパースイング度、バット角度、スイング時間、手の最大スピード、パワー、オンプレーンの効率、体の回転によるバット加速の大きさ、バットと体の角度(構え)、バットと体の角度(インパクト)、打球スピード、打球角度、推定飛距離
とはいえ、あくまで使用するのは練習がほとんど。BLASTを装着して試合を行うのはあまり一般的ではない。だからこそ、今回のリーグは試合時のスイングデータの収集として貴重な機会になっている。
試合中はBLASTで計測した数値がリアルタイムでタブレット端末に届く。それをゲームコーディネーターやアナリストが解析し選手に伝え、バッティングを分析したり、次の打席の改善へつなげたりする。BLASTで得られたデータが、パフォーマンスアップの材料となっている様子があった。
これにミズノの担当者・中田真之さんも「これまで練習時に多く使用してきたが、試合で装着するのは珍しい」と話したうえで、試合の中でデータを計測することの重要性を訴える。
「現在、試合でのスイング数値をMLBは公開するようになりました。 練習の止まっているボールではなく、投手の投げる球を、試合でどれだけしっかりスイングできるかを大事にしているんです。なぜなら、試合中リアルタイムでデータが取れることで、練習と試合の数値の違いや、自分の目標数値に届いているかなどを選手は知ることができる。そのうえで、対策を練って、次の打席に入ることができるので、結果を残すことは十分可能です」
実際に今回のリーグ戦に参戦している楽天・ワォーターズ璃海ジュミル内野手(ウェルネス沖縄出身)は「試合や練習で、瞬時にいろんな数値を計ることができて良い」と語っていた。またHonda・金城飛龍外野手(東海大相模出身)も、試合中のスイングをデータ計測できることは、非常に有用性が高いようだ。
「練習と試合の違いにも着目しています。やっぱり練習では止まったボールや、トスされたボールなどを打つので、もちろん試合とはスイングが変わってくる。もちろん数値だけにこだわることなく、自分の感覚も大事にします。それを踏まえたうえで、練習で理想の数値を確認して、試合でもそれに近い数値が出せるように、そして試合で結果を出せるように、日々の練習に取り組みたいと思っています」
一方で、ゲームコーディネーターとして参加していた渡辺龍磨さんは、金城が話していたように、データと感覚の両方を大事にすることを感じているようだ。
「ここ数年で“データ”への抵抗感がなくなっていると感じます。なので、データから現在地を知ってもらい、そこから具体的に目標設定をして、どう向かっていくか考えて欲しいと思っています。
けど、あくまでも試合で結果を残すことが大前提です。試合でどうパフォーマンスを上げるのか、どうやってチームを勝たせるのかを常に考えてほしい。そうするとゲームづくりや声かけ、自分の感覚など、数値では測れない部分が大事です。なので“感覚とデータ”をうまくミックスして自分の成長を管理できると良いと思います」
データ測定や数値を追い求めることが必ずしもパフォーマンスアップに繋がるとは限らない。しかし、データを上手く活用することができれば、これまで以上に効果的に、打撃力の向上が期待できそうだ。その点はミズノ・中田さんも「データの意味を顧問の先生やコーチ陣が理解して、選手に落とし込めれば、野球の底上げにもなると思う」と話し、BLASTのもたらす可能性に期待しているようだ。
新基準バットの導入によって、なかなか長打を飛ばすことは困難になった。だが、「芯でとらえれば打球は飛ぶ」という声は聞こえているのも事実。打撃技術を伸ばしていけば、十分対応が可能といったところだろう。その技術向上に、BLASTは必ず力になってくれるはずだ。BLASTが野球界にどんな形で貢献するのか、今後も注目していきたい。