各球団のスカウトはいま、盛んに来年のドラフト候補の視察を行っている。

 現在の高校生投手では158キロ右腕・石垣 元気投手(健大高崎)が一番手の扱いだが、続く評価を受けている左腕が、愛知の公立進学校にいる。

高蔵寺芹澤 大地投手だ。

182センチ68キロと細身ながら最速147キロを計測する本格派左腕である。芹澤がドラフト候補として大きく注目されたのはこの夏の愛知大会。140キロ台の直球を投げ込み、評価を上げた。そのスケールの大きさ、力量は横浜の146キロ左腕・奥村 頼人投手、夏の甲子園に優勝に貢献した京都国際の左腕・西村 一毅投手とひけをとらないという声もある。

 芹澤は11月23日に開催された第2回三重県・愛知県ピックアップチーム交流試合の愛知県選抜に選出され登板。2回を投げ、3失点、5奪三振という結果だった。課題は多くあるが、やはり世代を代表する能力を持った投手であることは間違いない。

 芹澤の強み、課題はなにか。

不調ながら直球だけで2回5奪三振!

 交流試合が行われた三重県・津球場公園内野球場。当日のコンディションは投手にとっては苦しいものだった。気温は11度ぐらいだが、北風がかなり吹いていたため、体感温度は10度以下。芹澤は第1試合の先発でマウンドに登った。ネット裏には多くのスカウトがおり、スピードガンを構えていた。

 初回の最速は142キロ。コントロールは乱れていたが、アウトはすべて直球で三振を奪っていた。2回になっても制球は安定しない。先頭打者に四球を与えてしまい、二死一、二塁から大浦 天眞投手(松坂商)に適時打を打たれ、さらに死球を与えて満塁になってしまい、水谷 宗太捕手(海星)にも甘く入ったスライダーを打たれて左前適時打。コントロールを乱して、走者をためて失点するという良くない点の取られ方だった。

 ただ、素晴らしかったのは直球の勢いだ。最速143キロ、平均球速136.3キロと左腕としては上級のスピード。球速表示以上に伸びがあるのか、三重県選抜の打者が空振りを繰り返すのだ。芹澤は「調子としては良かった時と比べると悪い方でした。それでも直球で空振りを奪えたことは自信になります」と振り返った。

 1年夏から公式戦のマウンドを経験し、当時の最速は130キロちょっとだった。球速アップのきっかけはフォームの意識を変えたことだ。

「上半身の体重移動の仕方、軸足の乗せ方の意識を変えたことですね。股関節に体重を溜めて投げるイメージですね。1年生から取り組んできて、2年春の試合からだんだんつかんできた感じです」

 伸びのあるストレートを投げられることについては、ボールの握りを意識している。

「回転数は高めたいと思っていて、指で強く弾くこと意識して投げています」

 伸びのある直球がある一方で、変化球の精度は低い。現状では120キロ台のスライダー、110キロ台のカーブのみ。鋭く曲がるわけではなく、ブレーキが効くわけではない。そのため真ん中に入った変化球を弾き返されていた。

 ストレートだけで圧倒できる精度があれば問題はない。ただストレートが走らなかったり、コントロールが定まらない場合、保険となる変化球は1〜2球種は必要だろう。芹澤自身も理解している。

「カーブは空振りが奪える精度までもっていきたいですし、スライダーはもう少し球速をあげてストレートに近い軌道にしたいです」

 変化球まで決め球になれば、さらに攻略困難な投手になるだろう。

元プロ監督も評価する芹澤のストレートの凄み

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