深夜3時までレジェンドは打撃練習を続けた

 宮崎では毎年プロ野球のキャンプが開かれます。これも猛練習をやるための説得材料になっていました。

 小川監督は「田舎者がダメなのは、プロ野球のキャンプを見て『すごい!』と思うだけで終わってしまうことだ。どんな練習をしているか、メモをとることが大事なんだ」といわれて、今だから話ができますが、授業をサボってキャンプを見に行っていたんです。

 その日、プロの選手が何の練習をやったのか、ノートに書いていきます。書いているときは分からないのですが、学校に戻ってくると愕然とするんですよね。その練習量に。

そして小川監督は言います。

「プロでもこれだけ練習していることが分かったよな。プロに行きたいなら、その練習に耐えられる体力をつけるために猛練習をしないといけないじゃないか?」

そこからハードな練習が始まるんです。

 ちなみに、僕が見に行ったのは猛練習で有名な広島でした。アップだけで1時間以上やっていましたからね。しかもカープには憧れていた大打者・前田智徳さんがいました。「この人みたいな打者になりたい」と思っていたので、練習はずっと前田さんを追いかけて見ていたんです。

 そんなある日、前田さんに声かけられたんです。

「何やお前、ストーカーみたいに見とるやないか!何者や!」

 僕は大きな声で、

日南学園で野球やっています!」

 と答えました。すると前田さんは、

「夜間練習見ていけや」

 と言うんです。

 夜間練習は夜8時から始まったんですけど、終わったのはなんと深夜の3時でした。

前田さんが「納得するまでは終われない」と言って……。

僕が見ている限り、前田さんはずっと快音を響かせていたんですけどね。

 前田さんが「これや!」と言ったのは、インローのボール球をセンター方向に持っていったときでした。納得した一打だったようですが、「引っ張らないのか」と驚きました。当時、前田さんは天才と呼ばれていましたけど、努力の人だと思いましたね。プロの練習量を見て、自分たちはもっとやらないといけないと痛感しました。

甲子園よりもスカウトの目に留まるほうが大事だった

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