2024年秋の東京都大会で、創部初のベスト4進出を果たした淑徳。都の21世紀枠推薦校にも選出されるなど、一際存在感を放ちました。同校の指揮を執る中倉 祐一監督が高校野球の現場の生の声を、高校野球ファンのみなさまにお届けします。
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創部初のベスト4進出
秋季東京都大会では、創部初のベスト4に進出し、第97回選抜高等学校野球大会、東京都の21世紀枠推薦校に選出して頂きました。
勝ち上がれた要因をよく尋ねられるのですが、正直分かりません…。それだけ周囲では驚きだったのでしょう笑。結果的に準決勝では手も足も出ずに完敗ですから、力の差を痛感しました。ただ、応援して頂いたOBや関係者からは、「落ち着いている」とか「動じていない」等の言葉を頂きました。結果が出たからそう見えるのかもしれませんが、もしかしたら我々が伸ばすべき強みなのかもしれません。
要因になるかは不明ですが、ここ数年の大きな変化は「割り切る」ことができるようになった点です。その割り切りが「動じない」と映ったのかもしれません。実際には、無死一、二塁のピンチに「無死一塁のつもりで割り切れ」と伝令を送ったらミスで満塁になり、無死満塁で腹を括ったら(私はかなり動じていましたが‥)無失点で乗り切るなど、その言葉の効果はよく分かりませんが‥。ただ、限られた練習環境や現状を前向きに捉え出したことが、様々なことに対するリフレーミングにつながっています。「割り切ることで目標が明確化し、その目標に対して能動的に取り組むことができる」という流れができている気がします。
例えば、練習環境は、校内施設(ケージ、ブルペン、トレーニング室等)と河川敷(区営施設)とに分散しており、野球がやりにくい環境を以前はマイナスに捉えていましたが、個人練習と割切ることで、分散(自主)練習による効率化で「個人の練習量増加」とプラスに考えるようになりました。
また、最近の働き方やコロナ後の変化から練習量が減りましたが、その分をミーティングに当てることで、チーム全体や自分自身を振り返る時間を持てるようになったのではないでしょうか。コロナ明け直後の練習試合でいきなり本塁打が出て驚いたことがありましたが、環境が限られていたからこそ、生徒達は工夫をして能動的な準備をできたのだと思います。今までよりも選手達を信じて、任せることが多くなっています。時には突っ込みたくなることもありますが、判断する経験を重ねるにつれて、我々大人と考えが一致することも増えています。
いずれにしても、変えられない強制的な環境や状況から、発想を転換せざるを得なかったこと、つまり割り切ることから、個人練習や考える時間が増える。目標や責任が明確になることで能動的になる。その結果、練習の質、プレーの質が上がり、自ら向上する“自上”効果が表れていると感じます。実は我々にとってはプラスの流れにつながったのだと感じます。
3年ぶりの今夏ベスト8、今秋ベスト4と代が変わりながらも安定した結果を出せたのは、決して今の努力だけではなく、歴代の先輩の考え方が浸透することで、分かりやすい結果として芽が出始めたのだと思っています。21世紀枠推薦校も、結果だけではなく、その過程を評価されたと認識していますし、自信を感じてほしいです。