ファンとして大谷の活躍以上に快哉を叫んだ今永のメジャー1年目15勝

5. 今永 昇太メジャー1年目の大活躍


△今永 昇太投手(2022年撮影)

  MLBシカゴ・カブスにとってこれは嬉しい誤算だったかもしれない。この小兵の日本人投手が1年間ローテションを守り15勝を挙げるとは、メディアも含め予想していなかったはずだ。筆者は今永が駒沢大2年生の時から見続けてきたが、まさに柔よく剛を制す、メジャーの一流打者をキリキリ舞いさせたピッチングには、一ファンとしてロサンゼルス・ドジャースを世界一に導いた大谷 翔平の今季の活躍以上に快哉を叫んだものだ。

6. 大谷 翔平50/50、 3度目のMVP

 とはいえ、やはり大谷のこの快挙は無視できない。開幕当初の「水原一平事件」など完全に吹き飛ばした活躍ぶりには恐れ入る。大谷の凄さは、なんと言ってもデータで研究され丸裸にされても、それを凌駕、克服しアスリートとして進化し続けているところだろう。はたして来年はまた二刀流の勇姿を拝めるか。

7.青山学院大学、大学4冠


△大学4冠を達成した青山学院大の選手達

 昨年は常廣 羽也斗(現・広島)、下村 海翔(現・阪神)のドラ1コンビをもってしても達成できなかった快挙。2008年の東洋大以来ということだが、当時の東洋大は乾 真大、上野 大貴藤岡 貴裕大野 奨太、小島 脩平、小田 裕也、鈴木 大地という後にプロ入りする錚々たる顔ぶれ。それと比べても、今年は西川 史礁(ロッテ・ドラフト1位)、佐々木 泰広島・ドラフト1位)、下級生に中西 聖輝初谷 健心中田 達也渡部 海とタレント揃いで遜色ない布陣といえる。2年連続四冠を狙えるチーム力は鉄壁とみた。

8. 健大高崎、選抜初優勝


△歓喜の輪を作る健大高崎の選手達(写真:アフロ)

 前年の戦績からしたら順当ともいえるが、2年生の佐藤 龍月石垣 元気のWエースが想像以上の強烈なインパクトを残した。今秋は関東大会決勝で横浜に苦杯をなめさせられたものの、選抜の切符は確実。世代No.1ピッチャーに君臨しつつある158キロ右腕・石垣は無双状態で、佐藤の怪我の回復次第では、来春の連覇も夢ではない。

9. 夏の甲子園、番狂わせ続出

 甲子園にはやはり魔物がいるのか。報徳学園大阪桐蔭智弁和歌山、春の覇者・健大高崎までもが早々に敗退、筆者予想がことごとく外れまくる結果となった。下馬評の低かった大社が93年ぶりにベスト8入りする健闘が光った大会だったが、報徳学園戦で登板した馬庭 優太を一目見て「このピッチャーには手こずるだろうな」という予感だけは見事的中した。

10.巨人・戸郷 翔征、広島・大瀬良 大地ノーヒットノーラン、投高打低の加速化

 2022年はロッテ・佐々木 朗希の完全試合含め5人、翌2023年も2人のノーヒッターが誕生したことに象徴される通り、近年は投高打低の傾向に拍車がかかっている。中日・髙橋 宏斗の防御率は一時期、1970年の村山 実(阪神)が残した0.98以来久しぶりの0点台を記録しそうなペースだった。球種の多彩化、平均球速の高速化などの要因から、投手優位の状況は今後も暫く続きそうだ。

一志順夫プロフィール
いっし・よりお。1962年東京生まれ。音楽・映像プロデューサー、コラムニスト。

早稲田大学政経学部政治学科卒業後、(株)CBSソニー・グループ(現・ソニーミュージックエンタテインメント)入社。 (株)EPIC/SONY、SME CAオフィス、(株)DEF STAR RECORD代表取締役社長、(株)Label Gate代表取締役社長を務め、2022年退任。

アマチュア野球を中心に50余年の観戦歴を誇る。現在は音楽プロデュース業の傍ら「週刊てりとりぃ」にて「のすたるじあ東京」、「月刊てりとりぃ」にて「12片の栞」等、連載中。

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