9日、現役ドラフトが実施され、12球団13選手の移籍が決まった。今年は3年目で初となる捕手の移籍や2巡目指名など、新たな展開も多かった。今回はセ・リーグの指名を振り返りながら、各球団の戦略と指名選手の実力をもとに総括していく。

評価基準は以下

戦略 A素晴らしい補強 B良い補強 C戦略的に疑問
実指名選手の実力 A即戦力級の活躍に期待 B一軍定着に期待 C今後に期待

巨人:田中 瑛斗投手(柳ヶ浦)前所属球団 日本ハム・ファイターズ

戦略:B
指名選手の実力:C

 強力なリリーフ陣を形成し、4年ぶりのリーグ優勝を果たした巨人。田中は力強い直球が魅力だが一軍経験は少なく、数年後を見据えた指名だろう。今秋のドラフトでは上位3選手を野手に割いたこともあり投手補強は頷ける。多額の資金も相まって、目先の補強はFA、ドラフトでは将来性を加味した戦略を貫けることも強みだ。

阪神タイガース 畠 世周投手(近大福山―近畿大) 前所属球団 読売ジャイアンツ

戦略:A
指名選手の実力:A

 一昨年に52登板で防御率3.07、今季も2軍ながら37登板で防御率1.41と、今年移籍した選手の中でも抜群の実績を誇る。回跨ぎも計算ができ、リーグトップの70登板を記録した桐敷 拓馬投手(本庄東―新潟医療福祉大)らの負担を減らす意味でも、打ってつけの補強となったと言える。

横浜DeNAベイスターズ 浜地 真澄投手(福岡大大濠)前所属球団 阪神タイガース

戦略:C
指名選手の実力:B

 質の良い直球が自慢のタフネス右腕。奪三振率の低さが懸念点だが、22年には52試合で防御率1点台の実績を誇り、リリーフ強化に期待がかかる。ただし、現在メキシコで先発調整をしている上茶谷 大河投手(京都学園ー東洋大)の放出には疑問が残る。濱口 遥大投手(三養基神奈川大)も中継ぎ転向となり、来季もローテーションに苦しむことも考えられる。今後、先発補強があるのか要注目だ。

広島東洋カープ 山足 達也内野手(大阪桐蔭―立命館大―ホンダ鈴鹿)前所属球団 オリックス・バファローズ

広島東洋カープ 鈴木 健矢投手(木更津総合―JX-ENEOS)前所属球団 日本ハム・ファイターズ

戦略:C
指名選手の実力:C

 山足はユーティリティー性に優れ、打撃でも勝負強さを見せる。曽根 海成内野手(京都国際)が戦力外となり、内野のバックアッパーとして重宝する存在になれるか。鈴木も新庄 剛志監督との指導のもと、アンダースローに転向して23年には6勝をあげた。九里 亜蓮投手(岡山理大付亜細亜大)の去就も不透明なことや、希少な変則投手として日本ハムよりも一軍出場は増えそうだ。

 しかし、実績もあり今季も26登板の矢崎が移籍することは痛手だ。 栗林 良吏投手(愛知黎明―名城大―トヨタ自動車)が10月に右肘手術を受け、万全な状態で開幕を迎えられるかは不透明。左の中継ぎは強力だが、右の中継ぎは手薄なだけに不安も残る。

東京ヤクルトスワローズ 矢崎 拓也投手(慶応―慶応義塾大)前所属球団 広島東洋カープ

戦略:A
指名選手の実力:A

 投手不足のヤクルトにとって矢崎の獲得は大きい。23年には54登板で24セーブと守護神をあげてチームを支えた。ヤクルト3年で2登板の柴田 大地投手(日体大荏原日本体育大日本通運)との入れ替わりとなり、実績だけで言えば12球団で一番得をしたと言ってもいいだろう。高校、大学の後輩にあたる木澤 尚文投手(慶応慶応義塾大)らと共に強力リリーフ陣を形成したいところだ。

中日ドラゴンズ 伊藤 茉央投手(喜多方ー東農大オホーツク)東北楽天ゴールデンイーグルス

戦略:B
指名選手の実力:C

 絶対的守護神のライデル・マルティネス投手が保留者名簿から外れたことで、チームにとっては中継ぎの補強は納得だ。伊藤も楽天ドラ3・中込 陽翔投手(山梨学院―山梨学院大―四国IL・徳島)ら、同じ右サイド右腕の加入で競争も激化が予想される中、環境の変化でチャンスとなる。制球力に課題があるが、変則フォームから持ち味の奪三振能力で信頼を勝ち取りたいところだ。