夏の甲子園の経験を胸に、この秋に一段と成長を見せた投手がいる。秋季東京都大会で準優勝した早稲田実の背番号1、中村 心大投手(2年)は、この夏の甲子園で3試合に登板した貴重な経験を生かした。
夏の甲子園、2回戦の鶴岡東(山形)では、延長10回を1人で投げ切って完封勝利。わずか4安打しか許さなかった。ベスト8をかけた大社(島根)との3回戦では、先発7回でマウンドを降りたが、失点はわずか1。自責点は0という好投を見せた。聖地は球児を成長させるというが、中村はまさにその典型ともいえる。
この秋の東京都大会では、大きな実績を残した。初戦は登板がなかったが、2回戦からの5試合すべてに先発して、防御率は1.13。さらに、40イニングを投げ、奪った三振はイニング数を上回る45に上った。2回戦の修徳戦では14奪三振。小山台、淑徳相手にもそれぞれ10奪三振と2ケタ奪三振をマークした。この夏の西東京大会では4試合15.1回を投げ21奪三振と、奪三振率こそ西東京大会の方が上回っているが、5試合すべて先発して、完封1を含む3完投したこの秋の実績とは、「価値」が違う。
左膝を折って、グッと重心を下げながら体重移動。低いリリースポイントから伸びのある速球と変化球を投じる。特に左打者への外角球は、直球であれ、変化球であれ、キレがあり空振りが奪える。右打者へも、伸びのある直球にタイミングが合わないのか、空振りするシーンが多く見られた。最速は145キロ。それだけでも十分な球速だが、打者からはもっと速く感じているのかもしれない。
東京都大会5試合で許した四死球は17。コントロールに磨きがかかれば、さらに投手として安定感が増す。来年春のセンバツ出場へは望みを残しているだけに、もし選出されれば、夏からの成長したマウンドを期待したい。
【中村の東京都大会の投手成績】
<東京都大会>
2回戦(修徳)9回5安打14奪三振2失点(自責1)
3回戦(昭和)6回3安打7奪三振0失点
準々決勝(小山台)9回7安打10奪三振2失点
準決勝(淑徳)9回4安打10奪三振0失点
決勝(二松学舎大付)7回8安打4奪三振4失点(自責2)
(※すべて先発)