VERITAS流の自主性で勝ち上がる!

森川のように中学時代に挫折しても、光英VERITASでは主力になれるチャンスはあるし、高校野球に打ち込める環境がある。その環境が整っているのは、舘野監督の考えがあるからだ。

「私の母にある時、一つ言われたことがありまして、『どんな子でも絶対にやめさせちゃダメ。悪いことをしてもいつか』みたいなことをいきなり言われたんですよね。
公立校を指導していた時は、野球以外でいろんな問題がありました。そういったこともあったからだと思いますけど、その一言があったから、野球を通じて好青年といいますかどんな選手でも辞めさせないことに極力こだわりましたし、『いつかはわかってくれる』というのが根本にあって、許せるんですよね。
だって、人間どこか弱いところもあるし、逃げたい時もある。気分転換をしたい時もある。何も間違えずに今日まで生きてこられたか、と考えれば、そうじゃないと思うんで」

そう語ると、続けて、「だから彼女とデートして休んでもいいよ、って選手にも話したことはありますよ」とやや笑みをこぼしながら、光英VERITASなりの自主性の形を語り始めた。

「もちろん無断で休まないようには伝えています。心配しますから。でもそれで気分転換になるなら、やる気になるなら、次の練習で気合が入るならば、と思っています。昔ならそんなこと許せないでしょうし、選手たちの中でもサボったと思う人がいます。そういう選手が試合に出ることが許せないから。でも、気分転換が必要なことはわかると思うんです。だから、逃げ道をあげるといいますか、そう言った道もあって選べるのがウチの自主性ですし、必要だと思うんです」

この環境は、「自分たちの意見を指導者に伝えやすい。融通が利くようなところだと思います」と森川主将は話すが、ほかにも光英VERITASは選手たちが指導者に意見を伝えられるように、珍しい体制を敷いているという。

「保健の先生に顧問をお願いしています。保健室にいる時間が終わったら、毎日グラウンドに来てくれるんですけど、そう言った人がいると、選手たちは休み時間に先生のところに行って息抜きをするんですよね。
そこでは指導者の批判はしないんですけど、たとえば休みが欲しいとか。それが指導者のところに共有されることはわかっているんですけど、選手たちは話すんですよね。そういった言いたいことを言えるのが保健室の先生みたいなんです」(舘野監督)

実際、森川主将に話を聞いても「最初はびっくりしましたが、選手と距離感が近いので、相談している選手が多いと思います」と話しており、良き相談相手であり、チームにとって欠かせない存在であることは間違いなさそうだ。

こうした努力、創意工夫をしたから、「多分これだけ選手が来てくれていると思います」と改めてチームの状況を振り返った舘野監督。

野球人口の減少は避けられない課題だ。そんなとき、大所帯となるのは、もしかすると光英VERITASのようなチームなのかもしれない。

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