全国でも有数の激戦区の1つに数えられる千葉県。強豪校として注目される学校でも、夏の甲子園にたどり着くことが容易ではない地区で、創部4年目・光英VERITASが年々存在感が際立ってきた。

初めての夏、そして2年目の2022年は2回戦で終えたが、3年目の夏は一気にベスト16進出。一気に県内に名を広める戦績を残した。

◆チーム紹介:「野球をやめようかな、って何度も思った」主将を救った新進気鋭校 光英VERITASが形作ろうとする新しい高校野球 を読む

5年目で迎えた転換期

注目された2024年は、3回戦・東海大市原望洋の前に0対1で惜敗。同じく甲子園を目指す強豪相手に敗れる結果に終わったが、延長10回まで競り合う熱戦を演じた。まだ4年目を終えたばかりだが、もう新設校ではなく、新進気鋭の実力校といっていい。

「ここで一花咲かせる、新しい学校で甲子園に行く。そう思って入学してくれる選手が増えてきた」と指揮官である舘野文彦監督はチームの変化を語る。

とはいえ、中学時代に強豪チームで主力として活躍した実力者。ましては代表選手として日の丸を背負うような逸材が続々入学するわけではない。むしろ、「中学時代は目立たなかった選手たちです」というが、「見返してやるんだという気持ちがあるので、何とか鍛える」と口調は優しいが、舘野監督は闘志を静かに燃やしている。

というのも、ベスト16に進出した2023年の夏、当時中学生だった選手たちが、現在の主力選手。チームが勝ち上がっていく姿を見て入学を決めてくれた選手たちだ。だから、「ベスト16まで行くことを当たり前というか、通過点として考えて、甲子園という言葉が勝手に選手から出てきます」とチームが目指す場所が自然と高くなってきたのだ。

ただ、舘野監督が光英VERITASに就任した時、野球を楽しくやる、選手たちを追い込み過ぎないことを大事にしてきたという。甲子園に行く、という目標を達成するには、どうしたって追い込まれた状況を立たされ、乗り越えなければいけない瞬間が来る。

実際、「引き続き楽しく野球をやりたいという選手もいる。だからバランスが大事になると思います」と舘野監督は話しており、チームの転換期にあるようだ。だからこそ、問われるのはチームの一体感。森川嵩広主将をはじめとした幹部を中心に、チームとしてのまとまりだ。

「普段から学年関係なく動けるようにしたり、副主将を2年で1人、1年2人選んだりしています。そうすれば主将を含めて2対2で対等ですし、先輩に言われて『何だよ』っていうギャップはなくなっている感じがしています。
あとは主将の地位を少し高くしているので、最近は主将が指摘してくれますね。授業と同じで、練習に集中している人がいるのに、邪魔しているのがいれば妨害と同じだと思っているんですけど、主将はそれを理解して指導してくれるようになりましたね」(舘野監督)

森川主将はこの体制を踏まえて「みんな意識が高いし、話し合いができているので、周りに助けられて、困ることはほとんどないです」と感謝の一言を語る。その一方で、主将としての働きについては、先輩たちの姿から学び続けているところもあるようだ。

「2人とも尊敬しているので目指していますけど、2人とも後輩がエラーすれば必ず声掛けして、肩たたきながら『取り返すから』ってフォローすれば、本当に活躍していた。ネガティブな言葉がなくて、うまくポジティブな言葉をかけて練習をやりきらせていたので、自分のものにしたいと思っています」

勝利を目指して、楽しく野球に向き合えるチームになれるか

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