花咲徳栄浦和学院が先頭に立って引っ張っている埼玉県。ただ春日部共栄浦和実、伝統校・上尾などあらゆる学校が上位進出を虎視眈々と狙って熾烈な戦いを演じている。

だから、夏の大会は毎年盛り上がる地区ではあるが、そのなかで上位校の仲間入りを目指しているのが、山村国際である。

前回の夏の大会では3回戦まで進出したが、さらに1年前の2023年には4回戦まで勝ち上がった。あと少し安定した実力が付けば、上位校として県内の立ち位置が大きく変わる。あと一歩のところにある。

求めるのは、人として“強い”選手が必要

「やっている練習はみんなほとんど同じことをしているはずなので、徹底してできるかどうか。求める基準を高めて妥協せずにやり続けることで、安定してベスト8に行けたらと思いますけど、この秋も頑張れば8強に行けるチャンスがあった。だから実力はあると思うんですけど、勝ち切れていないから不安じゃないですが、本当にいけるのか。疑っている部分があると思います」

そう語ったのは、山村国際の指揮官・石井 大士監督だ。この秋から前任の大坂仁総監督から引き継いで助監督から監督に就任。指揮官としてチームを引っ張る立場に変わった。

夏の大会直前で話を受けたので驚きの部分もあったが、幸いにも現チームはBチームとしてともに練習試合を戦ったメンバーが多い。だから「采配を振るうことについては、それほど困ることはなかった」と言う。

ただ先述したように、安定してベスト8進出を果たすにはやり通す力。徹底力のようなものが必要だと感じていた。だから、取材日のグラウンドにはホワイトボードにこんな言葉が書かれていた。

「野球が上手い選手はいらない。人として“強い”選手が必要」

令和に入り、どこか厳しさや強さばかりではなく、選手主体などが大切にされるようになった。そんな中でホワイトボードに書かれた一言はある種、逆行しているように感じられる。だがこれには、石井監督の強い思いが込められているようだ。

「大学時代は東京情報大でプレーをしていましたが、当時は優勝争いをする立ち位置で、全国大会を狙うチームでしたので、全国各地から強豪校出身の選手が集まっていたので、上下関係は自然と厳しかったです。
加えて、同じリーグには国際武道大や城西国際大。神宮大会出場をかけた関東大会では上武大などと対戦します。だから簡単に勝ち点は落とせないので、中途半端な気持ちでは戦えません。もしそんな気持ちなら、お金を払ってくれている両親に失礼だから辞めようって話がありました。それくらい普段の練習から緊張感をもってやって結果を出せたのは、肌感覚で覚えています。
だから選手主体でミーティングをすることはありますが、勝負に勝って選手たちにいい思いをさせたい、という思いをもって選手には強さを求めています」

シンプルだが、メッセージ性のある一言の裏側には、自身の経験から学んだものがあった。だから練習では「アップやノックからプレッシャーをかけて緊張感を作ります」と、厳しく指導している。それはチームの方針であることも関係しているが、こんな思いもあるようだ。

「試合のことを考えれば、自分に怒られるのはまだマシだとは思うんです。大声援の中でエラーやミスをした時にスタンドから、『あー』ってため息が球場に漏れてしまうほうが、ダメージが大きいと思うんです。であれば、練習から厳しく指摘、指導をしてあげたほうがと思うところもあるんですよね」

苦しみながらも本音でぶつかりまとまった

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