苦しみながらも本音でぶつかりまとまった

こうしたこともあり、石井監督は「同情をせずに、実力でベンチを決めました」と話すが、選ばれた選手たちをまとめる主将・生明稜希外野手(2年)は「スムーズにスタートを切ることが出来ていたと思います」と振り返る。

ただ、「(B戦の時に比べて)結果にシビアになったと思います」と勝利に対しての執念が強くなった分、選手間のなかで徐々に歯車がズレてきたようだ。

「2年生だけですが、秋の大会を前にばらけてしまう時期がありました。というのも結果を求めて、前任からガラッと変わって厳しい練習や声掛けをしてくださる指導者の考えに対して、それを嫌って楽しくやりたい選手たちの間で噛み合わないところが出てしまったので、話し合いをしました。
そこで『3年間厳しいこと、苦しいことがあってもやりきろう。他の学校だって乗り越えている』って最初は話をしたんです。あとは『自分たちの野球をやろう』と。強いチームはそこができるのに、自分たちは指摘されたままで自分たちの野球ができなかったので、話をして、徐々にまとまりました」

また生明主将のなかで、「ちゃんと思ったことを言ってもらわないとチームを作れない」と考えていたからこそ、選手1人1人とコミュニケーションを取って、仲間たちの本音を聞くことに徹した。

そんな生明主将を支えた学生コーチ・伊原碧斗も、当時は「最初は良かったんですが、練習を重ねるごとに意見が錯乱してきた感じでした」と振り返ると、詳しい状況をこう語る。

「ついていけない選手たちが出てきて、LINEでも口論になったので、チームの方向性が少しばらけて生明は悩んでいましたね。
ただ同じ方向に行くには時間がかかるので、2人で夜に話し合って試合に勝ちたいことはブラさないまま、チームをまとめるか。みんなに直接話そうということで、強制的にやらせるんじゃなくて、本音でコミュニケーションを取りました」

だから伊原は「チームが勝つために、選手が成長するために優しい言葉だけではなくて、言い回しを変えて言うべきことはしっかり言わないといけない」と勝利のために決心していた。

それは生明主将も同じである。
「監督からは厳しい指導を受けると思っているんですが、それを乗り越えたら、付いていければいい結果が残せると思っています。だから何を言われてもいいと思っていますし、自分が下がってしまうと、チームも下がってしまうと考えています。それくらい厳しいことをやらないと、いい結果は結び付かないと思うので、まずは自分が強くならないといけないと思います」

技術だけではなく、人としても上を目指したい

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