現在、日本ハムでプレーする浅間 大基選手(横浜)がOBとして知られる新宿シニア。近年は関東第一木更津総合など、名門校への進学実績を持つ強豪が、昨年12月に「新宿シニア杯少年野球大会」を主催した。2004年から少年軟式野球チームを対象に開催している同大会。昨年は14チームが参加し、豊上ジュニアーズが3連覇を達成した。

 昨年末で21回を迎え、毎年多くのチームが参加している。そんな伝統ある大会を中学の強豪シニアがなぜ主催するのか。新宿シニアの会長を務めている山崎 宇充氏は大会の意義をこう説明した。

「様々な地域のチームに参加していただき、新宿シニア杯が小学生たちの交流の場になっています。小・中学生を育てることが野球界全体の発展に繋がると思っています」

 実際に新宿区だけでなく、文京区や足立区のチームも参加し、3連覇を達成した豊上ジュニアーズは柏を拠点に活動している。

 同チームは昨年、高円宮賜杯全日本学童軟式野球大会でベスト8に入るなど、全国大会でも結果を残した。指揮を執った剱持 正美監督は、「チームは全国を目指して戦っているので3・4年生頃からは厳しく指導することもあります。方針は様々ですが、将来的に成長して中学生になってもレギュラーで活躍して欲しいという願いがあります」と選手への熱い思いを語っている。

 高いレベルのチームと対戦は、選手達に大きく影響を与える。決勝で対戦した「いちがやチーターズ」のキャプテン・末廣 悠月君も「寒い時期でもバッティングが凄かったです。自分たちも高いレベルを目指したいと思いましたし、とても勉強になりました」と、笑顔を見せる。山崎会長も、「小・中学生を育てるのは原石を育てることになります。たとえ中学で花が咲かずとも、高校で開花させればいい。選手にはこの経験を中学、高校と次のステージで活かしてもらいたいです」と話していた。

 山崎氏は、もう一つ大会のこだわりがあると話す。

「あくまで選手がメインという気持は変わりませんが、指導者あっての少年野球でもあると感じています。野球を続けていく中で、常に感謝の気持ちを持ってプレーすることを忘れないで欲しいです」

 通常、秋に卒業を迎えることが多い6年生も新宿シニア杯には出場している。そこで、監督への恩返しになるよう「監督賞」を作り、毎年優勝監督には豪華景品が送られるのだ。今年は新鮮な伊勢海老が贈呈されるなど、選手の活躍が指導者に還元される仕組みを作ることで、少年野球の活性化に貢献しているという。

 当日は息子の試合を一目見ようと、選手の家族も来場し、夢中になってプレーする少年たちに熱い視線を送った。試合後の表彰式ではメダルやリンゴ、野球道具など様々な景品に少年たちは目を光らせていた。野球人口が減少していっている中、野球界発展の入口としての魅力を新宿シニアは創造していく。