日本高校野球連盟(日本高野連)は23日、大阪市内で理事会を開き、高校野球特別規則と高校野球用具の使用制限の2025年シーズン版を承認した。

 2024年度からの大きな変更点では、これまで高校野球特別規則の附記に2024年まで(試行期間)としていた公式戦での投手の投球数制限(1週間500球)を、「投球制限検証ワーキンググループ(座長:正富 隆 日本高校野球連盟医科学委員会委員長)」からの検証結果報告を受けた上で、正式に高校野球特別規則とすることが決まった。

ワーキンググループでは2022年夏の全国選手権から、24年選抜までの甲子園4大会で、1回戦から準決勝まで登板した全投手を検診しB群とし、準々決勝、準決勝で登板した投手の検診記録が残る01年選抜から22年選抜までの投手をA群として、併せて875人の投手(延べ人数)のデータを細かく分析。「登板回数が増加し累積投球数が400を超えてくると肩肘の痛みの有症率が上昇する傾向が確認された」「投球制限導入前(2001年から19年)と導入後(21年から24年)では肩肘の痛みの調整前オッズ比は明らかに低下。調整後オッズ比は統計的有意差はなかったが低下傾向見られ、投球制限ルールが肩肘痛予防に影響を与えている可能性がある」などの詳細な分析結果が出た。

 これらの統計学的分析結果から、「大会中の投手の肩肘痛発生に関するリスク因子としては、投球数のみならず大会形態、大会前検診における肩肘痛の有無、成長期野球肘の遺残障害の有無などの影響も示唆されたが、投手の1週間500球以内という投球制限ルールは、肩肘の障害予防の観点から合理性を欠くものではない」との結論に達し、この日の理事会に報告された。

  ワーキンググループの座長を務めた日本高野連医科学委員長の正富隆氏は、「球数制限は一つの目安であるかもしれないが、それをコントロールすれば障害(痛み)が必ず減らせるというものではない。1週間500球以内なら投げても大丈夫という結論ではない。少ない球数で痛みが出る投手もいるので、指導者はそういうところをわかって、自覚をもってしっかりと見てあげてほしい」と訴えた。

 また、早稲田実で2006年夏の甲子園決勝で延長15回引き分け再試合を経験した斎藤佑樹さんは「ワーキンググループの解析結果を聞き、まずは1週間500球という投球数制限の理解を深めることができ、納得感も得られました。自分自身の高校時代の経験も踏まえ、今後の障害予防のさらなる普及には、選手ごとに体の柔軟性や疲労度が異なるなかでパーソナライズされた取り組みも必要だと感じました。投球数の制限だけでは怪我を完全に防止することはできません。別のルール改正なども検討していただき、高校年代の障害予防への取り組みがもっと広がることで、小中学生の怪我の予防にもいい影響を与えることを切に願っています」とコメントを出した。

 高校野球用具の使用制限では、アンダーシャツ、防護具、サングラスの使用について一部変更された。

アンダーシャツではユニフォームの着用時にアンダーシャツの柄が見える事象があったため、商標に加え柄も透けて見えないようにする文言となった。

サングラスは、これまで目の疾病や陽光を和らげることを想定し、主催者や審判委員に試合前に許可を得ることにしていた運用を変更し、選手や審判委員の目を紫外線から保護する目的で、レッグガードやエルボーガードなどと同様に使用を申し出る形での運用となった。これにより、日差しによってはサングラスを着用する選手が増える可能性もありそうだ。

 防護具の項目は新設となり、レッグガードやエルボーガード以外にも大会でフェイスガードの使用を希望する声が挙がっていたことから、用具ごとに細分化して使用制限が明記された。

高校野球特別規則と高校野球用具の使用制限は、日本高野連HPから見ることができる。