まもなく迎える新シーズン。新天地に向かう選手、進級する選手。それぞれ環境はあるが、全員が心機一転の気持ちで春を迎えるだろう。期待と楽しみで気持ちが高ぶり、自然と新たな道具を買いそろえて、気分一新で練習に励む選手たちも出てくるのではないだろうか。

リクエストに応えられる豊富なラインナップ

それは市場にも多少なりとも影響を及ぼしているようだ。今回の取材に協力してくれたスポーツメーカー・ミズノで、野球アパレルの企画開発を担当する羽柴翔太さんによると、春先は需要が高まることがデータから見えているという。

「3、4月あたりのいわゆる春先は大きく動いている印象です。野球を始める人、心機一転でユニフォームを買い替えるといったことが理由だと考えられますが、年間でみても大事なシーズンであることは間違いないと思います」

現在ミズノでは、練習用ユニフォームだけでも数多くの種類を販売。選手によって異なるリクエストに応えられるように、商品をラインナップしている。

「基本的に、丈夫さは求められている機能です。そのうえで上級者、長く野球をされている方は、プレー時の動きやすさを求めて、ストレッチ性がある強伸シリーズを選びやすいように感じます。
野球を始めたばかりの方とかだと、耐久性や汚れの落としやすさから、ガチパンツシリーズを購入してもらうことが多いと思います。
特に汚れに対しては、ユーザーからずっと求められていた機能なんです。いくら洗濯をしても、どうしても汚れが残ってしまう。そこにニーズがあったので、会社として応えられるようにした結果が、ガチパンツの耐久性を保ったうえで搭載しているピュアハイパーなんです」(羽柴さん)

どうして泥汚れ、ニオイはひどくなる?

ピュアハイパーとは、汚れとニオイにアプローチ出来る加工技術で、この加工によってニオイを抑えつつ、泥汚れが落ちやすくなるという。

余談だが、筆者も泥汚れは気にしていたし、帰宅してからすぐに洗濯の手伝いは何度もやってきた。その時のことを考えてもピュアハイパーは心強いが、そもそも現在はどれほどのユーザーが、ユニフォームの汚れを気にしているのか。ピュアハイパーの生みの親といっても過言ではない開発担当の西山茉里さんが、その疑問の答えを知っていた。

「弊社のECサイト内に投稿いただいたユーザーからの口コミを対象に、一度調査をしたんです。そのなかには、ストレッチ性や耐久性への評価の声が多く、泥汚れに対する声はあまり多くないのが正直な状況でした。
しかしながら、このガチパンツを開発するにあたってアンケートを取ったところ、9割近い方々が泥汚れを気にされていたんですよね。こすり洗いについても、ほぼ100%実施しているというアンケート結果が出ました。もしかすると、泥汚れが当たり前だと認識していることで、この結果が出ているかもしれませんが、ニオイに関しても7割近い人が気になっている結果でした。だから、汚れやニオイに対するニーズは想像以上に高いと考えました」

現在も汚れとニオイは、選手と家族にとっての天敵であることはデータを通じて見えてきた。が、汚れやニオイはどうして落としきれないのか。またなぜ残ってしまうのか。その仕組みは、イマイチ掴み切れていない人が多いだろう。

その点について、西山さんがピュアハイパーの開発段階で見えてきたことを解説する。

「汚れについてはいろんな種類がありますが、泥汚れは小さい粒子が繊維に絡まってしまうことで残ってしまうんです。洗濯をしても完ぺきに落とせるわけではない。なかでも奥の方に粒子が入り込んで繊維に絡むと、着用回数が増えるにつれて、粒子が蓄積されていき、汚れが目立ってしまいます。
ニオイについては、皮膚上にはたくさんの菌がいるので、その菌たちが皮脂や汗を分解することで、ニオイが発生します。また、野球は他競技と比較して練習時間が長くて、練習強度が強い。加えてスライディングなどで土の中に含まれる菌とも触れる機会があります。このように多くの菌に触れて、かつ練習時間も長く、菌の分解する時間が長いので、結果的に強いニオイが発生してしまいます。
洗濯をしても皮脂や汗を十分に落としきれなければ、ニオイが残ってしまいます」

そのため、「改善策として、汚れは洗濯で落ちやすいようにする。ニオイは菌を繁殖させにくい環境にすることが大事です」と開発段階での気づきをもとに対策を語る。

応援する人もサポートしたくて生まれたピュアハイパー

1 2