徳島で自慢の直球が急成長!最速159キロを計測で注目浴びる!

 四国アイランドリーグplusの前期リーグ戦では苦しい現実が続いた。満を持して4月にデビューを果たし3試合で2勝を挙げたが、5月10日の愛媛マンダリンパイレーツ戦では4回と2/3を投げて5失点、5月20日のソフトバンク3軍戦では、6失点と苦しい内容が続いた。

 6月には阪神2軍との試合で先発登板。3回無失点に抑えたが、同学年の井上 広大内野手(履正社)に中安打を許した。ドラフト指名を目指す工藤にとって、NPBとの対戦は大きな刺激となったという。

「やっぱり『当てる能力はある』って感じました。それでもいずれその舞台立ってプレーしたかったので、そんなにマイナスな気持ちにはならなかったです。」

 すると後期は安定した投球で勝ち星を重ねた。自慢の球速も次第に上がり、評価を上げていくと、8月18日の愛媛マンダリンパイレーツ戦では自己最速を更新する159キロを記録した。それでも、工藤はいたって冷静だった。

「球速自体は上がっているんですけど、まだ独立では通用している高い球でもNPBでは通用しないと思っています」

 直球は常時150キロを連発していたが「やっぱり当てられちゃうんで…」。悩める工藤は岡本 哲司監督の助言も受けながら原因を探した。

「リリースを後ろで離している、一番はそれですかね」

 課題解決に取り組みながら、最終的にシーズン8勝で最多勝に輝いた。もちろんドラフト候補として工藤の名前はメディアを飾った。

「でも、油断はできないなと思っていました。不安はありました。大学の時のこと(指名漏れ)もあったので、でも1年間プロに行くために必死にやってきたんで、行けなかったら来年また頑張ろうと思って割り切っていました」

念願のNPB入りも「正直悔しかった」

 複数球団から調査書が届く中迎えたドラフト会議。チームメイトの加藤 響内野手(東海大相模東洋大)がDeNA3位、中込 陽翔投手(山梨学院山梨学院大)も楽天3位で指名を受けたが、そのまま全球団の支配下指名が終了。

工藤が名前を呼ばれたのは育成ドラフト1位だった。念願だったドラフト指名だったが、工藤は複雑な心境だった。

「指名された瞬間は悔しかったですね。支配下で行こうと1年間やっていたので、指名があってからは本当に悔しかったです」

なぜ育成指名だったのか。自分自身を冷静に分析した。

「制球力っていう面では大学の頃よりは改善されたと思いますけど、まだボールも高いです。安定感が欠けていたかなと思います」

 NPBを目指す戦いは終わった。春季キャンプ二軍スタートとなった工藤には次の戦いが待っている。

「もちろん1年で支配下を掴むつもりです。今は浮かれてる場合でもないし。人より数倍やらないといけないです。一軍で活躍してこそプロ野球選手だと思うんで。独立で培ったハングリー精神を忘れずに、必死に1日1日大切にしてやってきたい」

 159キロ剛腕は、強力な阪神投手陣の中でどんな活躍を見せるのか、期待したい。